今回で3度目の携帯通信株クラッシュ、過去2回を振り返る

ところで、携帯料金引下げが発端となった大幅な株価下落は今回が初めてではなく、直近5年間で3度目になります。まずは、過去2回を簡単に振り返ってみましょう。

なお、株価の騰落率に関して、過去2回においてソフトバンクはまだ上場していなかったため、持ち株会社であるソフトバンクグループ(9984)を対象にします。当時のソフトバンクGは、現在のような“投資会社”としての色合いも薄かったため、ある程度は適正だと考えられます。

第1回目:2015年9月11日~各社の株価は2週間で約▲2割安

今から5年前の2015年9月11日(金)、政府の経済財政諮問会議で安倍首相(当時)が唐突に「携帯料金などの家計負担の軽減は大きな課題だ」と述べ、高市総務大臣(当時)に携帯電話の料金引き下げを検討するよう指示。

この事案は何の前触れもなく起き、そして、高市総務大臣が「通信費の家計支出に占める割合は、特にスマートフォン等もあって上昇していることから、低廉に利用できるような方策を検討したい」と抜本的な対策を講じる姿勢を鮮明にしたため、通信各社の業績悪化懸念が一気に高まりました。

その結果、週明けの株式市場では通信株が軒並み値を下げ始め、それ以降の概ね10日間でNTTドコモが最大▲19.7%安、ソフトバンクGが最大▲17.5%安、KDDIが最大▲16.6%安の急落となったのです。これら通信株のような時価総額の大きい銘柄がわずか10日間で約▲2割下落すれば、もう暴落に近い状態だったと言えましょう。

第2回目:2018年8月21日~各社の株価はわずか20分間で急落

2018年8月21日(火)の午後、菅官房長官(当時)が札幌市で行われた講演の中で「携帯電話料金は今より4割程度下げる余地がある」と具体的な数値を言明。これも前回同様に唐突感がありました。

多くのメディアが速報として報道したことで各社の株価が急落し、わずか20分間でKDDIは一時▲5.2%安、NTTドコモは一時▲4.7%安、ソフトバンクGは一時▲2.1%安に急落し、新規参入が決まっていた楽天(4755)も一時▲3.6%安へ急落しました。

翌日以降も“余震”が続いた結果、その後の約3週間でKDDIは最大▲8.6%安、NTTドコモが同▲5.2%安、ソフトバンクGも同▲4.0%安となりました。結果的に見れば、2015年の第1回目より下落は緩やかに止まったものの、菅氏が携帯料金引き下げに強い意志を持っていることが印象付けられたことは確かです。