新型コロナウイルスの感染拡大は世界的な需給にショックを起こしており、世界経済がコロナ前の生産水準に戻るのは数年間難しいと考える。
人々の健康への危機は、世界を変革させ、多くのビジネスモデルを永続的に変化させるだろう。また、世界経済の結びつきがより緩やかになるという「スローバリゼーション」、多国籍企業によるサプライチェーンの多様化(「中国+1」または地域化戦略)、地政学的緊張、米中の技術分断のリスクなど、現在進行中の世界のトレンドが、一層、加速するだろう。
中国指導部は、対外関係の不確実性に直面する中、経済のリバランスなど国内の課題に対処するために、新たな経済社会開発計画として、いわゆる「二重循環」成長モデルを推進中だ。この戦略の意図は、経済を開放しつつも、自給率の強化を通じて自国経済の強靭性を向上させることにあると当社は考える。
「二重循環」は、供給サイドの改革に続く最も重要な政策と見られており、今後、第14次5ヶ年計画の主柱になる可能性が高い。
内需を喚起し、中国のサプライチェーンを強化する「国内循環」に焦点
新しい開発パターンは「国内循環」に焦点を当て、内需の喚起を通じて中国のサプライチェーンを強化することで、ハイエンドテクノロジーや天然資源など主要分野での海外市場への依存の低減を目指す。
質の高い開発に焦点を当てることで、中国の成長モデルの安全性、効率、持続可能性、公平性が高まると考えられる。輸出主導から内需主導への成長のリバランス、成長の原動力としての国内消費への移行は、特に2008-09年の世界金融危機後の中国が長い間目標としてきたことである。
同国の対外貿易依存比率(商品・サービスの貿易総額の対GDP比)は2006年に64.5%でピークに達した後、減少に転じ、2019年は35.7%まで低下した。こうした中、新たな成長牽引役がまさに急務となっている。