10年後には増税が容易になる

いかに筆者でも、数千年待てば良いのだから増税は不要だ、などと考えているわけではありません。MMT論者ではありませんから。

しかし、今急いで財政を再建する必要もない、と考えています。それは、10年待てば今より遥かに楽に増税できるようになるからです。

10年後には、少子高齢化による労働力不足が激しくなり、「好況期には超労働力不足、不況期にも少しは労働力不足」といった時代になるでしょう。「現役世代と高齢者世代の人数比が変わることによって、作る人と使う人の比率が変わる」と同時に「高齢者の消費は医療や介護など労働集約的」だからです。

今、増税が難しい理由の一つが「増税して景気が悪化したら失業者が増えてしまう」ということがありますが、増税して景気が悪化しても失業が増えないならば、今より「気楽に」増税することができるようになるわけです。

もしかすると、10年後には労働力不足で賃金が上昇し、恒常的なインフレ圧力に悩まされるようになっているかもしれません。そうなれば、増税で景気を冷やしてインフレ圧力を弱める必要が出てくるかもしれません。増税がインフレ抑制と財政再建の一石二鳥政策となるわけですね。

常識的には、インフレ抑制は金融引締めの役割ですが、政府が巨額の借金を抱えている時に金融を引き締める(金利を上げる)と、政府の利払いが著しく増えてしまうので、それは避けたいわけです。そこで政府が日銀に「インフレ抑制は増税で行うから、金利は上げないでほしい」と要請するのでしょうね。