DXは本物の潮流なのか
――そもそもなのですけれども、これまで DX が普及してこなかった要因があるとすればそれは何でしょうか。そして、今回は以前と比べてどのような条件がかわってきているのでしょうか。
大きな要因として、変革をしなくても売上が立っていたこと、そして企業の縦割りの文化があると思います。実態としては、ぼちぼち売れているので、変革に対して切迫感がなかったということでしょう。
また、これまでのやり方、つまり部署ごとに役割が明確にわかれていて、それぞれ自分たちの仕事だけをやっていればよかったわけです。これが縦割りにつながっていました。
DXでは、例えば、製造業であればデジタル技術を使って、どのように全体の製造プロセスを効率化・スピードアップするか、どう顧客に届けるまでをスピードアップするかを、全社横断的に考える必要があります。
ところが、これが大手企業であればあるほど、これが難しいのが実情です。ぼちぼち売れているので、各部署が既存の業務で忙しくてそんな検討をする暇がない。そして全社横断的に変革を実行できるスキル・権限を持ったチームもない。これでは変革ができません。
しかし、今回のコロナ禍も1つのきっかけだと思いますが、商品が売れなくなってくると、このままではまずいと気づくわけです。そして、変革の必要性に切迫感が出てくる。そこで、いま様々な企業がDXに本気で取り組み始めているのだと思います。
DXに遅れた企業は滅びるのか
――DX を推進できない企業は今後どうなるのでしょうか。
FinTech(フィンテック)、HealthTech(ヘルステック)、EdTech(エドテック)、AgriTech(アグリテック)など、「XX+Tech」による業界の再編は至るところで起こっています。
流通のインフラ化や商品のコモディティ化により、あらゆる産業の勝負の源泉は上位レイヤーに移りはじめています。そうしたことに気付いてか、ベンチャー企業や他業種から新事業として上位領域への参入が起こり始めているのです。
上位レイヤーとは、顧客の本質的なニーズという情報に対してどれだけ上手く加工して製品・サービスを届けるのか、という情報加工のレイヤーという意味です。
これをどれだけ上手く・高速に出来るようになるかが勝負を分けることになります。それに対応することこそがまさにDXと言えます。
ここの勝負に乗れない企業は当然衰退していくことになるでしょう。これはまさにデジタル化により自動車というモビリティを再設計・捉え直したテスラが大手自動車メーカーの時価総額を抜いたことに代表されると思います。
また、DX を理解し、事業に取り入れていくことができないSIも厳しい環境に追い込まれることになります。顧客である事業会社に必要な提案が出来ないということになると思いますので、当然これも衰退していくことになると思います。