誰がDXをうまく活用しているのか

――DXをうまく取り入れた企業や具体的な例があれば教えてください。

サービスとしての評価は様々あるかとは思いますが、新価値創造型DXとしては、資生堂のOptune(オプチューン)は良い取り組み事例だと思います。

利用者がスマホアプリで肌写真を撮ると、肌の状態と天候等を考慮して最適な美容液を調合してくれるIoT製品です。商品を売り場で売るのではなく、サービス化する。そして、それに伴い、業務プロセスも大幅にトランスフォームしていると想定されます。意欲的な取り組みだったのではないでしょうか。

また、海外の例ですが、業務改革型のDXとしては、中国の大手ECの京東商城(JD.com)の完全無人倉庫があげられます。商品の入荷、棚入れ、ピッキングから、梱包、積み込みまですべてロボットが行うという完全無人の倉庫です。

さらに配送のトラッキングもできるようにしたことで、購入者は、時間単位での配送指定も行えるようになったそうです。既存の業務のあり方をがらりと変えた良い事例だと思います。

日本のDXを先に進めるのは誰なのか

――DXを推進していくのは、誰なのでしょうか。単に利用者が求めれば普及するのか、それともIT環境を事業者に提供するSIと呼ばれるシステムインテグレーターでしょうか。

DXを推進する主体は、基本的には業務改善や新規事業に取り組む事業者になります。もちろん商品やサービスに関係することであれば消費者や利用者の存在を無視することはできないでしょう。

また、SIerはそれを助ける存在でしかありません。アドバイスをする立場のコンサルタント等も一端を担うことにはなりますが。DX自体はビジネスそのものを変革させる必要がありますので、そのアイディアは第一義的には事業者から出てくるものであろうと考えます。

しかし、そのSIerであったり、SIの仕事の仕方も変わっていかなければDXの進展というのも大きく期待できないと考えています。これまでのSIのあり方が「SI 1.0」とすれば、今後は「SI 2.0」へと進化していく必要があるともいえます。