日銀のETF買い増しで下値安心感が出た2016年8月8日-12日

2016年8月8日-12日、日本の株価は反発しました。7月末の日銀金融政策決定会合における追加緩和が市場の期待を下回り、翌週に失望売りが出ましたが、ETFの買い増しと根強い追加緩和期待から日本株は反発し、TOPIXは対前週末比+3.4%上昇しています。

前回の記事(8月11日付け)では、マネックス証券の2016年8月1日-5日の売れ筋投信において、ベア型投信がトップ5から消え、グローバルリートや米国リートの投信がトップ3を占めたとご案内しました。では、8日-12日の楽天証券の売れ筋には同様のトレンドが見られるでしょうか。

楽天証券 2016年8月8日-12日の全銘柄売れ筋ランキングを見る

それでは、全体ランキングを見てみましょう。

第1位:ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Aコース(為替ヘッジあり)

第2位:フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)

第3位:ワールド・リート・オープン(毎月決算型)

第4位:ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型

第5位:ニッセイ日経225インデックスファンド

いかがでしょうか。前週のマネックス証券のトレンドと同様に、楽天証券のランキングにおいてもブル型やベア型の日本株投信が姿を消し、米国リートやグローバルリートの投信が上位を占めています。

米国リート投信、人気の秘密は分配金利回り

海外リートに人気があるのは、日本の投資家が毎月分配型の投信を好むという理由もありますが、その前段階として配当利回りが高いことがあげられるでしょう。リートは、大胆に言えば、不動産賃貸会社の高配当株と例えることができます。

そして、北米のリートの利回りはドルベースで大体3%台半ばの水準です。日本では預金金利がほぼゼロに近いので、少しでも利回りを求める投資家には魅力的に見える投信です。

海外リート投信の残高トップ3とは?

ちなみに、海外リート投信で残高が1兆円を超えているファンドが3つあります。

それは、新光US-REITオープン、フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)、ラサール・グローバルREITファンド(毎月分配型)です。これらのファンドは、買付手数料がかかるかどうかは証券会社によりますので単純比較はできません。しかし、保有している期間に信託報酬を投資家は負担します。これが3ファンドとも概ね年率1.5%を超える水準にあることを覚えておいてください。

米国リート投信の残高トップ2、そのパフォーマンスは?

今回はこの3つのファンドの中で、米国リート投信の2つをとりあげてパフォーマンスをみてみましょう。

まず新光US-REITオープンですが、2016年7月5日の月次レポートによれば、税引前分配金を再投資したとして算出した基準価額の推移は、過去1年が▲0.4%、3年が+35.9%となっています。悪くない印象ですね。

次に、フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)の2016年7月29日の月次レポートによれば、上記と同じ基準のパフォーマンスは過去1年が+3.46%、3年が+52.66%になっています。これも悪くないパフォーマンスに見えます。ただし、新光のファンドとは基準日が異なりますので、どちらが良いかはここでは言い切れません。

ただし、皆さんに注意していただきたい点があります。フィデリティのレポートによれば、その投信のベンチマークのパフォーマンスは1年が+2.95%、3年が+60.92%です。つまり1年のパフォーマンスはベンチマークより少し良かった、しかし3年のパフォーマンスは、実はベンチマークに負けています。

この原因は2つ考えられます。1つは投資家が負担する信託報酬です。もう1つは信託報酬を支払っているにもかかわらず、この期間にファンドマネージャーの銘柄選択がうまく行かなかったことです。

低コストのインデックス投資も登場し、真の競争が始まる

こうして数字を見ると、「信託報酬は負担するので、多少パフォーマンスがうまく行かないことがあってもしっかり運用してほしい」という考えの方がいらっしゃると同時に、「それならベンチマークを忠実に真似して運用し、その分信託報酬を低くできないか」と考える方もいらっしゃるでしょう。

そこで、(証券会社にもよりますが)販売手数料がゼロ(ノーロード)で信託報酬が低いインデックス型の米国リート投信が出現しています。たとえば、SMT米国REITインデックス・オープン、eMAXIS 米国リートインデックス、インデックスファンドUSリート(毎月分配型)などです。信託報酬はそれぞれ税込で0.594%、0.648%、0.756%と低くなっています。

なお、これらのベンチマークはS&P米国REITインデックス(配当込み、円換算ベース)となっていますので、先に述べた大型投信とは異なりますので注意してください。

これらのファンドはまだ残高が小さく、運用成績も安定しているとは言えないかもしれません。しかし、低コストの運用を求めるニーズを捉えて残高を伸ばせば、運用成績が安定する可能性が高いと思われます。こうなると、先に述べたアクティブファンドも従来以上に成果を出すため知恵を絞ることでしょう。

投資家の皆さんにとって、選択肢が広がることは好ましいことです。ご自身に合った投信を選んでいただければ幸いです。

こうしたインデックス型の海外リートファンドは、ここでご紹介した以外にもさまざまなものがあります。改めて別の機会にご案内したいと思います。

なお、Jリートの分配金利回りもほぼ3%台中盤です。米国リートと水準があまり変わりませんので、円高リスクを心配されるのであればJリートにも注目してはいかがでしょうか。

 

LIMO編集部