イオンを有する原料から作られた吸水性ポリマーの中はイオン濃度が高いので、浸透圧の原理(イオン濃度の低いところからイオン濃度の高いところに水が移動する)によって、ポリマー中に水が入ります。

水はポリマー分子の親水基(水と親しくする部分、この場合はカルボキシル基、正確にはイオン)と無数の水素結合(水のプラスを帯びた水素原子がこの場合にはマイナスを帯びた酸素原子と引き合う弱い相互作用)を作ることにより化学的に結合されるので、スポンジの場合(単なる吸着)と異なり絞っても水は出てきません。

同時に、ポリマーの中は、カルボキシルイオン同士の静電反発により、広げられた分子の網目空隙に水が取り込まれます。これが吸水のメカニズムです。

吸油性ポリマーの開発は、この吸水性ポリマーのメカニズムを低極性液体、すなわち油に適用しようとするところからスタートしました。

すなわち、親水基を親油基(油と親しくする部分、疎水基ともいう)に置き換えれば、親油基と油との分子間力(ファンデルワールス力、中性分子と中性分子が引き合い凝集する力で、同じもの同士が引き合う力)により、油がポリマーの分子に吸収されると考えられます。

ここで問題になったのは、まず油と親しくするための親油基にどのような構造を持たせたらいいのか、そして油を入れる空隙をどのように設けるかでした。研究が色々と行われましたが、効果的な結果はなかなか見出せなかったようです。ここで、ナノファイバーが注目を浴びることになりました。

ナノファイバー製吸油性ポリマー

ナノファイバーの前に、マイクロファイバーの話をしましょう。身近なマイクロファイバーには東レの「トレシー」があります。メガネを購入した時にもらう、あのメガネ拭きですが、これは極細繊維・マイクロファイバーを使ったクリーニングクロスです。