こうした特徴から、油の処理に困っている食品加工工場、金属加工工場、製油工場、機械製造工場や飲食店、ホテルなどから注目されています。

2019年8月に発生した九州地方の豪雨では、佐賀県大町町で浸水した鉄工所から大量の油が漏れ出しました。その除去のために、エム・テックス社は約19万枚のマジックファイバーを自治体に寄付、水害の復旧に寄与したことは記憶に新しいところです。

今回のモーリシャス沖の事故を受けて、エム・テックス社はJICA(国際協力機構)に30センチメートル四方のシート約1200枚を寄付。さらに、クラウドファンディングでの購入支援(募集期間終了)のほか、「モーリシャス緊急支援プロジェクト」を実施しています。

人間によって、いったん汚染破壊された自然を修復するのには困難を伴いますが、油で汚れたモーリシャスの海が、日本で開発されたマジックファイバーによって再び美しい海に戻ることを祈ります。

自己膨潤型高吸油性ポリマーの開発史

それでは、マジックファイバーとはどんなものか、少しその科学(化学)的な側面を覗いてみましょう。

従来の油処理剤では、吸蔵型(シリカなど無機系と不織布など有機系)、ゲル化型(商品名・固めるテンプルなど)が知られていますが、最近のものは、油を単なる隙間ではなく分子内に吸収、しかもいったん吸収した油を漏らさない特徴を有する自己膨潤型高吸油性ポリマーです。

まず、このポリマーの開発史を、やはり日本で開発された自己膨潤型高吸水性ポリマーと対比させて考えてみましょう。自重の数百倍の水を分子内に吸収して膨潤する吸水性ポリマーが、紙おむつなどに広く使われていることは周知の事実です。