もうひとつ、この例えの優れたところは、最後にはすべての問題が解決する、ということです。爺ちゃんと父ちゃんと母ちゃんが死に、すべての財産と借金を子供が相続すれば、子供は無借金で貯金を持っているわけですから、何の問題もなくなるわけです。
財政赤字も、極端な話ですが数千年後に少子化によって日本人が最後の一人になり、その子が死ねば、すべての財産と借金が政府のものになりますから、政府の借金はあっさり消えて何の問題も残らなくなるのです。
数千年待つ話は極端だとしても、「財政赤字は子孫にツケを残すものだから、増税をして子孫の負担を減らすべき」という主張が誤りであることもわかります。
父ちゃんが母ちゃんに生活費を負担させれば、父ちゃんの借金は減りますが、母ちゃんの資産(父ちゃんへの貸付)も減るので、子供が相続できる金額の合計は変わらないからです。
「財政赤字は将来の世代への増税だ」というのは正しいのですが、それを避けるために現在の世代に増税すると、将来世代が受け取れる遺産が減るので、遺産相続のことまで併せて考えれば財政赤字を減らすことにそれほどの意味はないわけです。
以上、いかがでしたでしょうか。家計の赤字としてしまうと家庭の外への借金が生じてしまいますが、家庭内の貸し借りだとすれば、外への借金は生じないので、筆者の案の方が現実をスッキリ説明できていると思うのですが。
本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。
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塚崎 公義