「どこかへ連れて行ってもらった記憶はほとんどないです。土日はいつも家と庭の掃除や管理。キレイな家を保って、それをご近所さんに見せるというのが楽しみだったんでしょうね。友人が親と釣りやキャンプに行く話を聞くと、うらやましく思っていました」
それだけのお家だとHさんもキレイ好きだと思いますが、「家事は親がやるものですから、私は一切できなかったんですよ。結婚してから悩みました。『親のようにやらないと』と思うけどできなくて、罪悪感に押し潰されそうでした。両親が訪ねてくると、『小さい時から見ていたのに、何でできないの』なんて責められたり。
一歩進んで教えてくれればよかったのにと思います。両親は育児よりも、家事の方が好きだったのでしょう」。
今でも家事に悩み続けているというHさん。本人もスーパーのお惣菜や食洗器などの便利家電に抵抗があり、夫もいい顔をしないものの、ママ友が当たり前のように使っていると心が揺れるといいます。
時代は変わる。自分たちの家事を考えよう
このように、親の家事が完璧だったとしても子どもが幸せとは限らないようです。分かりやすい「家事というカタチ」よりも、子どもは親の笑顔、そして心のゆとりといった目に見えないものを一番求めているのかもしれません。
「一世代は30年」といいますが、30年も経てば生活は変わるもの。核家族、共働き、ワンオペ育児、イクメンと、一昔前とは価値観が変わりました。
大切なのは過去にとらわれることなく、「自分たちの家庭の家事」を考えていくことでしょう。たとえば「料理だけは手作りで、他は家電に頼る」「仕事と育児優先で、家事は便利なものや外注に頼る」というように、「わが家のルール」を決めてみると、過去とも他者とも比較しなくて楽になるのではないでしょうか。
永山京子