共働きが主流となった今でも、「手作りこそ愛情のしるし」という考えが残っていたり、家事の手抜きをして罪悪感を感じる女性は少なくありません。
大人の立場から見ると、整えられた家や手作り料理といった「カタチ」は子どものために思えるでしょう。一方で、子どもが見ているのは親の「カタチ」だけではありません。親の表情や精神状態なども子どもはよく見ているものです。
完璧な家事は本当に「子どものため」になっているのでしょうか。子ども時代に家事を完璧にする母のもとに育ったという、現在育児中の女性に話を聞きました。
不機嫌な横顔で家事をする母…一番の願いは笑顔だった
友達からうらやましがられるほど料理上手な母をもったTさん。
「母は朝から旅館のような朝食を作り、夕食には季節の食材を使った料理が何品も出てきましたし、おやつももちろん手作り。座る暇もなく掃除もするので、いつも家の中はピカピカでした。遊びに来る友達にはうらやましがられましたね。
でも、正直、私はうれしくなくて……。母はいつもピリピリしながら家事をしていたので、怖かったんです。台所に立つ母に描いた絵を『見て』と言うと、振り返った顔が、はじめ怒っているんですよ。すぐに笑顔に変わるのですが、それも違和感の残る作り笑顔。だんだん家事をする母に話しかけるのは止めるようになりました」。
共働き、ワンオペ育児となると、時間のないなか疲れて家事をする人が多いでしょう。家事をしながらイライラしているのは、筆者も身に覚えがあります。Tさんの家庭の場合、「自分が親になり、嫁となって、なぜあんなに母が家事に固執していたか分かるようになりました」と苦笑い。
親を反面教師にしているというTさんは次のように続けます。
「中学生のとき、友達が『うちのママ仕事で疲れてて、平日はソファで一緒になってグダグダしてるよ。部屋が片付いてるなんて土日の朝くらい』なんて笑いながら言っていたのが逆にうらやましくて。
親が笑顔でいるのが一番の願いだったので私は無理して家事をしません。”子どもに呼ばれたときに笑っていられるライン”を保つために使えるものは何でも使うし、目指すは”適当”です」。
好きで家事をしているなら見ていいものですが、不機嫌になりながら家事をする親の横顔には、子どもは恐怖を覚えるのですね。”子どもに呼ばれたときに笑っていられるライン”は参考になりそうです。
出かけるより掃除…両親は育児より家事が好きだった!?
近所でも家がキレイで有名だったというHさん。Hさんの実家は、帰宅したら靴の底はタオルで拭いて家に入るのが決まり、というほどの徹底ぶりだそう。両親ともに家をキレイにするのが好きな家庭でしたが、「子ども時代に親に遊んでもらった記憶はありません」とのこと。
「どこかへ連れて行ってもらった記憶はほとんどないです。土日はいつも家と庭の掃除や管理。キレイな家を保って、それをご近所さんに見せるというのが楽しみだったんでしょうね。友人が親と釣りやキャンプに行く話を聞くと、うらやましく思っていました」
それだけのお家だとHさんもキレイ好きだと思いますが、「家事は親がやるものですから、私は一切できなかったんですよ。結婚してから悩みました。『親のようにやらないと』と思うけどできなくて、罪悪感に押し潰されそうでした。両親が訪ねてくると、『小さい時から見ていたのに、何でできないの』なんて責められたり。
一歩進んで教えてくれればよかったのにと思います。両親は育児よりも、家事の方が好きだったのでしょう」。
今でも家事に悩み続けているというHさん。本人もスーパーのお惣菜や食洗器などの便利家電に抵抗があり、夫もいい顔をしないものの、ママ友が当たり前のように使っていると心が揺れるといいます。
時代は変わる。自分たちの家事を考えよう
このように、親の家事が完璧だったとしても子どもが幸せとは限らないようです。分かりやすい「家事というカタチ」よりも、子どもは親の笑顔、そして心のゆとりといった目に見えないものを一番求めているのかもしれません。
「一世代は30年」といいますが、30年も経てば生活は変わるもの。核家族、共働き、ワンオペ育児、イクメンと、一昔前とは価値観が変わりました。
大切なのは過去にとらわれることなく、「自分たちの家庭の家事」を考えていくことでしょう。たとえば「料理だけは手作りで、他は家電に頼る」「仕事と育児優先で、家事は便利なものや外注に頼る」というように、「わが家のルール」を決めてみると、過去とも他者とも比較しなくて楽になるのではないでしょうか。