令和8年(2026年)4月からの制度改正により、在職老齢年金の減額基準額が月51万円から65万円へ引き上げられました。6月に届いた「年金額改定通知書」で、ご自身の年金額や手取りの変化を確認された方も多いのではないでしょうか。

この記事では、年代別の平均年金受給額から、おひとりさまになった際の遺族年金の落とし穴、年金以外にもらえる「5つの公的給付金」までを整理します。

各章の最後には、1000世帯以上の家計相談を担当してきたファイナンシャルアドバイザーの私からコメントを添えています。

なお、年金額の詳しいデータや制度解説は、下記の記事より一部を引用・参照しています。本文中の引用部分は引用ブロックで示しています。

【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金
【2026年最新版】老齢年金一覧表「60歳代・70歳代・80歳代・90歳以上」の平均年金月額はいくら?手取りのリアルと5つの公的給付金

1. 記事を読むとわかる3つのポイント

  •  【平均値の罠】60歳代〜90歳以上の平均年金月額と、その数字が自分に当てはまらない理由
  •  【おひとりさま転落】夫の死後、妻の年金が「4分の3」に再計算される遺族厚生年金の仕組み
  •  【申請主義の壁】5つの公的給付金は、自分で申請しないと1円ももらえない

2. 【2026年度の年金額改定と年代別一覧】60歳代〜90歳以上、平均受給月額はいくら?

まずは、2026年度の年金額改定の内容を確認しておきましょう。

  • 国民年金(基礎年金):+1.9%
  • 厚生年金(報酬比例部分):+2.0%

【2026年度年金額(月額)】

  • 国民年金(1人分):7万608円
  • 厚生年金(夫婦2人分※):23万7279円

※厚生年金は男性の平均的な収入(平均標準報酬45万5000円)で40年間就業したケースのモデル額です。

では、実際の受給者はいくら受け取っているのでしょうか。厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』をもとに、年代別の平均年金月額を見ていきます。

【厚生年金】60歳代の年金額1/1

【厚生年金】60歳代の年金額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

60歳代は受給額にばらつきがあり、60〜64歳では10万円前後と低めの水準が続きます。65歳以降は受給額が増え、15万円前後で安定します(65歳:14万9862円/69歳:15万1284円)。

70歳代は受給額が14万〜15万円台で推移し、全体として大きな変動は見られません。

80歳代は緩やかに増加し、15万円台後半から16万円台へと上昇する傾向です。90歳以上は16万4027円となります。

国民年金は65歳以降が6万円台へ増えたあと、70歳代後半から5万円台後半へ下がり、90歳以上では5万5633円です。60歳代前半が極端に低いのは、繰上げ受給や、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分のみの受給者が含まれるためです。いずれも額面であり、手取りは天引き後さらに少なくなります。

あわせて、現役時代の年収別の目安も確認しましょう。40年間同じ年収で働き続けたと仮定したケースです。

現役時代の平均年収 年金受給額(月額目安)
年収300万円 約12万円(手取り約10万円)
年収500万円 約16万円(手取り約13.5万円)
年収700万円 約20万円(手取り約16.5万円)

※簡易的な目安であり、実際の受給額は加入期間や配偶者の有無で変動します。繰上げ・繰下げ受給による増減率と注意点もあわせてご確認ください。

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中島 卓哉

この一覧表を見て「思っていたより少ない」と考える方は多いのではないでしょうか。大切なのは、この数字を自分の見込み額と混同しないこと。平均額は過去に働いた人たちの実績値で、これから受け取る額は加入期間と報酬額で変わります。ねんきんネットで見込み額を確認し、その額で暮らせるかを逆算してみてください。

3. 70代・80代で直面する「おひとりさま転落」と遺族年金の罠

夫婦世帯の年金は、会社員夫と専業主婦妻なら合計で約22万〜23万円、共働きなら約26万〜30万円が目安です。夫婦が健在のうちは生活費をシェアできますが、どちらかが亡くなると生活基盤は一変します。

遺族厚生年金の基本的な計算式は、「亡くなった夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3」です。例えば、夫の厚生年金が月10万円(基礎年金を除く)だった場合、遺族厚生年金は月7万5千円となります。

これに妻自身の基礎年金(約6万円)を足しても月額13万円台にとどまり、これまでの生活水準を維持することは困難になります。

収入が月22万円から13万円台へ4割近く減る一方で、家賃や光熱費といった固定費は半分にはなりません。ここに、老後資金が想定より早く目減りする構造があります。

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中島 卓哉

ライフプランを作るとき、「夫婦が健在の期間」と「どちらか一方になった期間」を分けて試算します。後者で収支が反転するご家庭は驚くほど多いのです。埋まらない差額を保障で備えるのか資産で埋めるのか、配偶者自身の厚生年金を増やす選択肢も含め、世帯単位で考えておくと安心です。

4. 年金だけで諦めない!60歳・65歳以上がもらえる5つの公的給付金

年金以外にも、要件を満たせば受け取れる公的給付金があります。

  • 加給年金:厚生年金に原則20年以上加入した人が65歳到達時に65歳未満の配偶者などを養っている場合、特別加算を含めて年間約40万円台が支給されます
  • 高年齢雇用継続給付:60歳時点より賃金が75%未満に下がった人に、各月の給与の最大10%相当額が65歳まで支給されます
  • 高年齢求職者給付金:65歳以上で退職した人が受け取れる一時金で、最大50日分が一括支給されます。年金と併給できます
  • 年金生活者支援給付金:所得が一定基準額以下の年金受給者に上乗せ支給されます(老齢の場合は月額5,620円などが基準額)
  • 高額介護合算療養費:1年間の医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、限度額を超えた分が払い戻されます

このうち年金生活者支援給付金の受給要件と注意点は、要件が毎年判定されるため状況の変化で支給停止となることもあります。そして最も重要なのは、これらが原則「申請主義」だという点。条件を満たしても、自分で気づいて期限内に申請しなければ受け取れません。

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中島 卓哉

年間40万円台が数年続けば100万円を超えることもあります。公的制度で埋められる部分は制度で埋め、足りない分を自助努力で準備する。この順番を間違えて、必要以上に保険や運用で背負い込んでしまわないように注意したいところです。

5. 【監修者コメント】元銀行員が考える、年金の「手取り」と40代からの逆算

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中本 智恵

今回の改定で国民年金は約1300円、厚生年金は夫婦2人分で約4500円の増額ですが、年金額が上がれば住民税や介護保険料の算定基準も上がります。特に10月支給分からは前年所得に基づく本徴収が始まるため、増額改定の年ほど「思ったより手取りが増えていない」と感じやすいです。

一覧表を読むコツをひとつお伝えすると、平均額の凸凹には必ず理由があるということ。厚生労働省のデータでは63歳の平均額だけが6万8758円と大きく落ち込んでいますが、これは特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分だけを受け取っている方が多く含まれるためです。平均値をご自身の見込み額と重ねる前に、その数字が自分と同じ受け取り方をしている人のものかを確かめていただくことをお勧めします。

では現役世代は何を目標にすればよいのでしょうか。年収500万円の会社員の目安は月約16万円、手取りで約13.5万円。仮に月20万円で暮らしたいなら毎月6.5万円ほどの不足が出ます。

65歳から90歳までの25年間なら、6.5万円×12カ月×25年で約1950万円。これが「自力で用意したい金額」の目安になります。

この1950万円を40歳から65歳までの25年間、新NISAのつみたて投資枠で年率5%で運用しながら準備すると仮定すると、必要な積立額は毎月およそ3万3000円です。同じ25年で預金だけ(金利ゼロと仮定)なら毎月6万5000円が必要になるため、運用を組み合わせることで毎月の負担を半分程度に抑えられる計算になります。

もし準備期間が15年しかなければ、毎月約7万3000円が必要です。25年なら月3万円台、15年なら月7万円台。この差そのものが、始める時期の価値となります。あくまで一例の試算であり将来の運用成果を保証するものではありませんが、数字で見えると少し気持ちが軽くなるのではないでしょうか。