日々のニュースでは物価上昇の話題が絶えず、老後の生活資金、特に年金収入について気にされている方も多いことでしょう。

実は、公的年金だけでは収入が一定基準に満たない場合に、年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」という制度があるのをご存知でしたか。

中本 智恵

「年金だけでは心もとない」と話すシニアは少なくありません。老齢・障害・遺族のいずれの年金を受け取っている方にも関わる制度ですが、意外と知られていないというのが実感です。まずはご自身が対象になるかどうか、要件から確認していきましょう。

この記事では、どのような方がこの給付金の対象となるのか、具体的にいくら受け取れるのか、そしてどのような手続きが必要なのかを、一つひとつ丁寧に解説していきます。

ご自身が対象になるかを確認し、利用できる制度をしっかり活用するために、ぜひ最後までお読みください。

1. この記事の3つのポイント

  •  老齢・障害・遺族の3種類があり、要件を満たせば公的年金に上乗せして2カ月に1度継続的に支給される
  •  老齢年金生活者支援給付金の対象は、65歳以上・世帯全員が住民税非課税・年金等収入とその他所得の合計が80万9000円(または80万6700円)以下
  •  2025年3月時点の平均給付月額は老齢4146円・障害5727円・遺族5228円で、手続きは基本的にはがき型請求書の返送のみで完了する

2. 「年金生活者支援給付金」を受け取れる方の条件について

公的年金等の収入やその他の所得額が基準額に満たない年金受給者の生活を支援するため、「年金生活者支援給付金」という制度があります。これは一時的な給付ではなく、年金に上乗せして継続的に支給されるもので、最初の申請さえ済ませれば、要件を満たす限り2カ月に1度のペースで支給が続きます。

年金生活者支援給付金制度について1/7

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

基礎年金の種類に応じて、以下の3種類に分類されており、それぞれ支給要件が異なります。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

本章では、気になる「年金生活者支援給付金の支給要件」について深堀していきましょう。

2.1 障害年金・遺族年金を受給している場合の支給対象

まず、「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」はそれぞれの年金(障害基礎年金もしくは遺族基礎年金)を受給中であることと、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。

このときポイントとなるのが、「所得には障害年金や遺族年金などの非課税収入は含まれない」という点です。

扶養親族などの数に応じて、所得の基準額があがる点も押さえておきましょう。

2.2 老齢基礎年金を受給している場合の支給対象

年金生活者支援給付金制度について2/7

年金生活者支援給付金制度について

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

一方、老齢年金生活者支援給付金の支給対象は少し異なり、下記の支給要件をすべて満たす必要があります。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額とその他の所得(給与所得や利子所得など)との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下

「老齢年金生活者支援給付金」については、本人の所得以外の要件も加わることに注意しましょう。なお、老齢年金生活者支援給付金の判定にも、障害年金・遺族年金等の非課税収入は含まれません。

また「基準額ギリギリで給付対象となる人」との間に不公平感が生じないように、「基準額をわずかに超えて給付対象外となる人」には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

対象となるのは、「昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方」、「昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方」です。

中本 智恵

基準額をわずかに超えてしまった方にも「補足的老齢年金生活者支援給付金」という受け皿が用意されている点は、見落とされがちなポイントです。「自分は対象外だろう」と思い込む前に、この補足的な制度も含めて確認してみることをおすすめします。

3. 年金生活者支援給付金の支給額はいくらになるのでしょうか

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を見ていきましょう。

2025年3月時点の平均給付月額()は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。

※2025年3月において認定されている平均給付金額です。

給付金額別の給付件数は以下のとおりです。

3.1 老齢年金生活者支援給付金の給付額と件数

  • 1000円未満:7万5101件
  • 1000円以上2000円未満:31万4450件
  • 2000円以上3000円未満:59万9166件
  • 3000円以上4000円未満:108万2177件
  • 4000円以上5000円未満:103万4357件
  • 5000円以上6000円未満:104万5423件
  • 6000円以上7000円未満:18万5291件
  • 7000円以上8000円未満:9万3265件
  • 8000円以上9000円未満:4万4796件
  • 9000円以上1万円未満:1万9891件
  • 1万円以上:1万524件

3.2 障害年金生活者支援給付金の給付額と件数

  • 5000円以上6000円未満:149万3700件
  • 6000円以上7000円未満:68万3466件

3.3 遺族年金生活者支援給付金の給付額と件数

  • 1000円未満:ー
  • 1000円以上2000円未満:607件
  • 2000円以上3000円未満:1569件
  • 3000円以上4000円未満:ー
  • 4000円以上5000円未満:ー
  • 5000円以上:7万5531件
中本 智恵

老齢年金生活者支援給付金は3000円台〜6000円台に受給者が集中していますが、なかには1万円以上を受け取っている方もいます。保険料の納付状況によって金額に幅が出るため、平均額だけでなく分布も参考にしてみてください。

4. 年金生活者支援給付金を受け取るための請求手続き

本章では「年金生活者支援給付金の請求手続き」を解説します。

すでに公的年金を受給している人のうち、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が届きます。

4.1 すでに基礎年金を受給している方の手続きの流れ

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー6/7

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金手続きのご案内リーフレット」

  • 毎年9月の第1営業日から順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されてくる
  • 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は電子申請が利用できる
  • 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、切手を貼ってポストに投函

なお、支給要件に当てはまるかどうかが確認できない人には「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」および「所得情報等を確認するための所得状況届」が届きます。

続いて、年金自体を新規で請求する場合のフローを確認しましょう。

4.2 これから老齢基礎年金を請求する方の手続きの流れ

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ7/7

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ

出所:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」

  • 65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して送付
  • 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と併せて年金事務所に提出

※障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金の対象者のうち、基礎年金を初めて新規で請求する方(年金と給付金を同時に請求する方)は、給付金の請求書が自動的に郵送されません。年金の請求手続きとあわせて、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口で給付金の請求手続きを行う必要があります。

4.3 年金生活者支援給付金はいつ支給されるのでしょうか

年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく偶数月の15日に支払われます。なお、15日が土日または祝日のときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しとなります。

例えば10月に給付されるのは、8月分・9月分の給付金です。

年金の受取口座と同じ口座に振り込まれますが、通帳にはそれぞれ別の振込として記載されます。

5. 監修者から:「知らなかった」で終わらせないために、今日からできること

中本 智恵

年金生活者支援給付金は、要件さえ満たせば手続き自体はそれほど難しくありません。ただし、日本年金機構からの案内が必ず届くとは限りません。65歳からの老齢基礎年金では原則として請求書が同封されますが、所得未申告などの理由で届かないケースがあります。また、障害年金や遺族年金を新規申請する方は事前に案内が送られてこないため、年金の請求時にご自身で給付金の請求手続きを行う必要があります。

公的年金の受給額には個人差が大きく、思っていたより所得基準に近い方も少なくありません。

まずはご自身や配偶者の課税状況、年金収入とその他所得の合計額を確認し、対象になりそうであれば年金事務所や市区町村窓口に相談してみることをおすすめします。

6. まとめ

今回は、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」について、支給要件・支給額・手続きの流れを詳しく見てきました。

老齢・障害・遺族の3種類の基礎年金に応じて給付金が用意されており、所得などの要件を満たす場合に生活を支える心強い制度であることがお分かりいただけたかと思います。

ご自身の状況が支給要件に当てはまるかどうか、今一度確認してみてはいかがでしょうか。

日本年金機構から案内が届く場合もありますが、制度を知っておくことで、より確実にご自身の権利を活用できます。

参考資料

中本 智恵