マーケットサマリー
インド株式市場は、3月下旬以降、欧米における新型コロナウイルスの感染拡大ペースの鈍化を背景に世界の株式市場が反発する中で、戻り相場を続けている。最近では、インド国内における経済活動の段階的な再開も株式市場のサポート要因となっている。
ただし、インドでは感染の拡大ペースは依然として収まりを見せていない。債券市場は、昨年12月下旬以降、世界的な金融緩和の動きやインド準備銀行(中央銀行)による追加緩和を背景に、上昇(利回りは低下)基調を維持している(8月7日現在)。
トピックス
コロナ禍でも順調に拡大するインドへの投資
インドでは新型コロナウイルスの感染拡大が続き、累積感染者数は7月6日に米国とブラジルに次ぐ世界3位となった。感染者数の最多記録は連日更新され、感染拡大ペースは現在、世界最速となっている。しかし、感染者の致死率は2.28%(インド保健省調べ)と世界でも最も低いクラスにとどまっていることも事実である。
6月の経済指標やその他のデータは、大半の部門において経済活動が4月および5月と比べ、大幅に拡大したことを示している。しかし、多くの数値は新型コロナウイルスの感染拡大以前の水準をなお大きく下回ったままであり、また一部の先行指標は7月に早くも上昇から横ばいに転じる兆候を示している。
直近のデータの中では、外貨準備高の急増が特に注目される。外貨準備高は6月末に5,000億米ドルの大台に達し、増加の勢いは7月も続いている。その結果、インドの外貨準備高は、中国、日本、スイス、ロシアに次ぐ世界5位に躍進した。
外貨準備高は、2018年度(2018年4月-2019年3月)に33億米ドル減少したが、2019年度は595億米ドルの増加に転じた。さらに、2020年度第1四半期(2020年4~6月)のみで310億米ドルの大幅増を記録している。以下では、外貨準備高が急増を続けている理由と、それがインド経済と外国からのインド投資にとってどのような意味を持つかについて考える。
最近の外貨準備高の増加傾向は、インド準備銀行(中央銀行)が2019年に採用した、米ドル安傾向が強まればルピー高を、米ドル高傾向が強まればルピー安を容認する外国為替政策と相まって拡大した資本流入を反映したものだ。