エピソード1. 離婚には至らなかったものの、夫婦間にしこりが…
「夫は大学時代からの憧れの先輩でした。スポーツ万能で容姿端麗、競争率の高い高嶺の花と思っていたのですが、大学卒業後思い切って私から連絡を取り、なんとお付き合いすることに。その後も交際は続き、私も社会人になって数年が経てから結婚することになりました。こんなに素敵な人と結婚できるなんてと、私はすっかり舞い上がっていました。と同時に、常に不安を抱えていたことも否めませんでした。
結婚して半年後、夫の行動に違和感を覚えたのです。家の中を移動する際にも、どこに行くにもスマホを肌身離さず、常にソワソワしている感じでした。最初はまだ新しい環境になじめないのかと思っていたのですが、その私の考えは甘かったと、すぐに分かったのです。
その日はたまたま夫がリビングテーブルの上にスマホを置いたままで着信が鳴りました。ふいにスマホの方に目線をやると、女性の名前が表示されています。戻ってきた夫に尋ねると、あたふたしているので疑惑は深まる一方です。さらに問い詰めると『実はストーカーまがいにあっていて…』と言います。
同じ職場の人間で、大ごとにしたくないと言う夫。学生時代からモテていた夫を知っているだけに、私はその言葉を信じました。逆に『ひとりで悩まずに、もし手助けが必要だったらいつでも力になるから』なんて、夫を励ましたのです。
そんな事件から約3年が経ち、私は第一子を妊娠しました。ひどい悪阻で入院を余儀なくされてしまった私。夫は毎日のようにお見舞いに来て、励ましてくれました。その日も面会時間ギリギリまでお見舞いに来てくれ『また明日来るね』と言いながら、帰っていく夫の後ろ姿を見送ったのです。
気が付くと、夫のスマホが目に止まりました。病室に忘れて行ったのです。いつもだったら中を開いてみるなんてしないのですが…夫のスマホの中身を開き、着信履歴やメールやSNSをチェックしました。
そこで見つけたのは、特定の女性とやり取りをしている数々。その内容はあたかも恋人同士のように甘い内容ばかりでした。そしてその相手女性の名前を目にした時、私の記憶は遡ったのです。そう、あの結婚して半年くらいの時に夫が『ストーカーまがい』と言っていた時の女性と同じ名前だったのです…。
『携帯忘れちゃった』と陽気に病室に戻ってきた夫は、そのスマホを片手に凍り付く私を見て状況を察したらしく、一瞬にして顔が青ざめました。『本気じゃない』『遊びだったんだ』と言う夫の言葉は空しく感じるばかりです。あの時から…と思うと、信じられるわけがありません。
その場ですぐに相手の女性に私から連絡し、私が妊娠して入院中であること、また正式な慰謝料請求も考えていることを伝えると、相手はただ平謝りでした。電話を切った後に夫の連絡先を消去するように伝え、夫のスマホからもその女性の連絡先を消去しました。
その時お腹にいた子も、いまや小学生です。夫とは夫婦関係を続けていますが、あの時にできてしまったしこりがいまだ拭えず、夫を信じきれない私がいます。今、目の前で笑っている夫の笑顔が本物なのか…なんて、どこか重い気持ちを常に持ち続けています。」