コロワイドのTOBは、「減益が続きコロナ禍で赤字転落した外食企業の株式を、過去最高値に近い水準で購入しようとしている」という構図です。東京で新規感染者が再度急増するなど、コロナの影響が長引く可能性のある外食業界の銘柄としては、客観的に見れば破格の好条件でTOBが行われる形となっています。

なお、株価3,081円で計算すると大戸屋の時価総額は約223億円※となります。過去5期の当期純利益が最大3.6億円で、直近の決算が赤字である企業の時価総額200億円超えは、異例の評価と言えるのではないでしょうか。

※発行済株式数7,242,287株(2020年3月期決算短信による)× 株価3,081円

M&A巧者、コロワイドの”本気度”

『牛角』のレインズインターナショナル、『かっぱ寿司』のカッパクリエイトなど、数多くの外食企業のM&Aを手掛けてきたコロワイドは、M&A巧者として知られています。

M&Aを繰り返して大手外食企業グループを築き上げたコロワイドの目から見て、大戸屋の再生は充分可能であり自らの勢力拡大の絶好のチャンスとにらんだのではないでしょうか。定時株主総会で思わぬ敗北を喫したものの、大戸屋に対するTOB価格からは、コロワイドの本気度が感じられます。

実はコロワイドもこれまでのM&Aにより、2020年3月期末時点でのれんが718億円と自己資本389億円を大幅に超えており(コロワイドは国際会計基準を採用)、TOB成功の際は新たにのれんが増えるため、相応の覚悟を持っての動きと思われます。

大戸屋の株主にとって好条件で行われるコロワイドによるTOBですが、再び株主総会のように予想を翻す結果となるでしょうか。今後の行方が注目されます。

【参考資料】
株式会社大戸屋ホールディングス株式(証券コード: 2705)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」(株式会社コロワイド)
2020年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」(株式会社コロワイド)
2020年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」(株式会社大戸屋ホールディングス)
平成30年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」(株式会社大戸屋ホールディングス)
平成28年3月期決算短信〔日本基準〕(連結)」(株式会社大戸屋ホールディングス)

石井 僚一