CSOTは全方位で次世代開発

 先に紹介したとおり、すでにSDCは、テレビ用液晶パネルの生産を削減する代わりに、新型有機ELのQD-OLEDを事業化する方向へ舵を切り、25年までに総額13.1兆ウォンを投資する計画を大々的に発表済みだ。

 また、ここにきて、液晶や有機ELに続く新技術として「マイクロLEDディスプレー」が注目を集め、サムスンや中国のテレビ各社が商品化に動き出している。FPDメーカーとしては、かつてのように「ブラウン管」か「液晶」か、「液晶」か「プラズマ」かといった択一ではなく、製造方式も技術的にも選択肢が多様化しており、現時点で一本に絞るのが難しい。

 例えば、CSOTの動きにそうした難しさを見ることができる。CSOTは、10.5Gの液晶、インクジェットの有機EL、マイクロLEDにすべて布石を打ち、どの技術が主流になっても対応できるような網を張り巡らせつつあるからだ。

 CSOTは先ごろ、JOLEDと資本業務提携契約を結び、インクジェット方式でテレビ用大型有機ELパネルの実用化を目指すと発表した。CSOTは、JOLEDの第三者割当増資に応じて200億円を出資すると同時に、JOLEDの能美事業所と千葉事業所で3年間にわたり共同開発を行い、テレビ用大型パネルの量産課題を解決していく。これとは別に、CSOTはJOLEDに100億円を融資し、JOLEDはこれをもとにして、新たに能美事業所に大型パネル用のインクジェット印刷装置を開発・導入する。

 他方、CSOTは、中国LED製造大手のサンアンオプト(三安光電)の子会社であるサンアンセミコンダクターと、ミニ/マイクロLEDを共同研究する開発会社の設立に合意した。CSOTが55%、サンアンセミコンダクターが45%を出資し、両社が持つディスプレーとLEDの技術リソースを活用して、マイクロLEDチップ、移載&ボンディング、カラー化、リペアなどエンジニア技術を開発する。一連の技術確立に3年を充てる考えだ。

CSOTはサンアンとマイクロLEDの共同研究会社を設立

インクジェット有機ELに期待

 CSOTに限らず、BOEもミニ/マイクロLEDに関してLEDベンチャーの米Rohinniと合弁会社「BOE Pixey」を設立済みであるほか、テレビ用有機ELに関してはWOLED方式での事業化を検討中といわれ、一方でインクジェット技術の研究にも取り組んでいる。

 サムスンは、SDCがQD-OLEDの量産投資を進める一方、テレビ事業を手がけるVD(Visual Display)グループは現在のところ8Kの量子ドット液晶テレビを主力に据え、次世代テレビ技術はQD-OLEDとマイクロLEDを両にらみとする「2トラック戦略」を推進し、グループ内で技術開発を競わせている。

 このように、「ポスト液晶」をめぐる次世代の大型FPD技術は、「有機EL」を本命に、その次の候補に「マイクロLED」が挙がりつつも、まだ混沌としている。ただ、液晶の増産投資が本当になくなると仮定し、8.5G工場のリニューアル投資や液晶に代わる製造装置ニーズ、テレビ用パネルとして液晶と伍する価格競争力を持つことなどを考えると、筆者としては「インクジェット成膜によるSide by Side塗り分け方式のトップエミッション型有機ELの量産化実現」に期待したい。

 いずれにせよ、2023年以降に向けて、FPD業界の新たな技術動向を今後もつぶさに探っていく必要がある。

電子デバイス産業新聞 編集部 編集長 津村明宏

まとめにかえて

 液晶ディスプレー業界は厳しいコスト競争から日韓台の主要企業が次々と脱落するなか、中国勢の存在感が増しています。しかし、その中国企業のあいだでも淘汰の波が押し寄せています。20~21年にかけて中国液晶メーカーの合従連衡が進むと予想されており、業界関係者のあいだでも注目が集まっています。

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