本記事の3つのポイント
- アップルがMac向けに独自のCPUを搭載することを表明。年末から出荷予定で今後2年かけてインテル製CPUからの移行を進める
- 自社製品の差別化のため独自CPUの設計を行うトレンドを作ってきたのがアップル。iPhoneに始まりiPadやApple Watchにもその流れが波及していた
- CPUの製造はiPhoneやiPad向け同様に台湾TSMCが担う。先端の7nmプロセスを活用
米アップルは6月22日から年次開発者会議「WWDC 2020」をオンラインイベントとして開催した。例年、カリフォルニア州サンノゼで関係者を集めて大々的に開催していたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今回はオンライン形式に切り替えて行った。なかでも今回大きな注目を集めたのが、Macに独自のCPUを搭載する「Apple Silicon」と呼ばれる取り組みだ。
CPU内製化の先駆者
アップルは主要製品のCPUの内製化を推進してきた先駆者的存在だ。今でこそ、中国ファーウェイやサムスン電子なども自社設計によるCPUをスマートフォンなどに搭載しているが、アップルのそれは2010年の「iPhone 4」に搭載された「A4」プロセッサーに遡る。アップルは今回の発表のなかで、「シリコンはハードウエアの核であり、先進的なシリコン設計チームがいることが革新的である」(SVP Hardware TechnologiesのJohny Srouji氏)と、製品開発におけるCPUの重要性を強調している。
アップルは「A 4」以降、10世代にわたってiPhone用プロセッサーの性能を向上させてきて、CPU性能は100倍に向上したという。そして、同社のプロセッサーを語るうえで欠かせないのが、CPUを製造してきたファンドリーの存在だ。A4は45nm世代の製造プロセスが採用されたシングルコア品であり、韓国のサムスン電子が担った。
当時、サムスンのファンドリー事業は今ほどメジャーな存在ではなく、アップルのCPU受託製造が飛躍のきっかけとなった。その後、13年の「A7」までサムスンが製造を請け負っていたが、14年の「A8」でTSMCにスイッチ。世界最大手のファンドリー企業であるTSMCがアップルのCPU受託を狙っているという話は数年前から話題として挙がっていたが、14年の20nm品から現実のものとなった。その後、一部でサムスンファンドリーを活用する世代もあったが、基本的にはTSMCを一貫して使い続けている。