公的年金のしくみは2階建て

会社員(/公務員)をやめると厚生年金の加入対象から外れ、国民年金への加入義務が発生します。毎月支払う年金保険料は減る可能性がありますが、その場合、将来もらえる年金も減ってしまいます。年金額がどの程度変化するかを理解するために、まずは年金制度の「2階建て構造」の概要をおさらいしておきましょう。

1階部分は「国民年金」

国籍を問わず、日本に住む20歳以上の人全員に加入が義務づけられています。

2階部分は「厚生年金」

会社員や公務員などが加入します。(2015年、公務員などを対象としていた共済年金は厚生年金に統一されました(※2)。つまり、厚生年金の被保険者は、国民年金と厚生年金の両方に加入することになります。

(※2)「平成27年(2015年)10月から共済年金は厚生年金に統一されます」国家公務員共済組合連合会

年金はどのくらい支給されているの?

つぎに、実際に支給されている年金の金額について押さえておきましょう。

厚生労働省の資料(※3)によると、2018年度末時点の平均年金月額は厚生年金保険(第1号)で14万6000円、国民年金で5万6000円でした。単純に計算すると、夫が会社員で妻が専業主婦の世帯では1カ月あたり20万2000円、夫婦とも国民年金だという場合では11万2000円をもらうことになります。

(※3)「平成30年(2018年)度 厚生年金保険・国民年金事業年報(8ページ目)」厚生労働省

支払う保険料はいくら?

厚生年金の保険料は、従業員と雇用している企業とで半分ずつ負担する仕組みです。2017年9月以降の保険料率は18.3%に固定されたため、従業員の負担分はその半分の9.15%となります。月の給与が25万円だった場合の保険料は、1カ月あたり約2万3000円になる計算です(※4,5)。

(※4)「保険料額表(平成29年(2017年)9月分~)(厚生年金保険と協会けんぽ管掌の健康保険)」日本年金機構
(※5)「厚生年金保険料の計算方法について」日本年金機構

一方、国民年金の保険料は物価や賃金の伸びにあわせて調整されます。2020年度の保険料は、1万6540円です。(※6)

(※6)「国民年金保険料の額は、どのようにして決まるのか?」日本年金機構

専業主婦の夫が独立する場合…

厚生年金被保険者の夫に扶養されている妻は、国民年金の第3号被保険者に該当します。国民年金保険料の支払いは免除され、65歳になると1カ月あたり約6万5000円が受け取れます(満額支給の場合)(※7)。

(※7)「令和2年(2020年)4月分からの年金額等について」日本年金機構

一方、会社員だった夫が独立すると、専業主婦の妻は国民年金の第1号被保険者となります。1カ月あたり1万6540円×2人=3万3080円の保険料を負担していく必要があります。夫が会社員だった期間の厚生年金分は国民年金に加算されますが、定年まで会社員を続けていた場合に比べると年金額は目減りします。

また、夫に”万が一のこと”があった場合に支給される遺族年金の扱いも、厚生年金と国民年金とでは異なります。国民年金で遺族年金が支給されるのは、基本的に「18歳未満」など、一定の条件を満たす子どもがいる場合のみです。(※8、9)

(※8)「遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」日本年金機構
(※9)「遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)」日本年金機構