リオデジャネイロオリンピック、開幕へカウントダウン
リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックは8月5日(現地時間)スタート。開幕まであとわずかです。
リオデジャネイロと日本との時差はちょうど12時間。夜から深夜にかけてテレビ中継に釘付けになる日が続きそうです。昼は高校野球、夜はオリンピックというスポーツ観戦漬けの日々を過ごす方もたくさんいらっしゃるでしょう。
ご祝儀相場はあるのか?
では、ご祝儀相場はあるのでしょうか?
金融市場は基本的に理詰めの世界です。大きなイベントによってヒト・モノ・カネの流れが変わる部分は相場に反映されますが、「ご祝儀」という相場は原則としてありません。
しかし、ここで念のためブラジルの代表的な株式指数であるボベスパ指数の過去10年間の推移を確認してみましょう。
ボベスパ指数はリーマンショック前に高値を付けましたが、リーマンショックで急落し、次いで急反発しました。しかし、その後高値を更新することなく5年以上にわたってじり安の推移になっています。
ここで「おや?」と思われた方もいらっしゃるでしょう。チャートの右端を見ると、チャートが上昇しそうにみえるからです。2010年の高値から右肩下がりだった株価が、そのトレンドを打ち破って上抜けるかもしれない――今このボベスパ指数はトレンド転換の節目にあると言えそうです。「オリンピックをきっかけに反騰トレンドに入らないだろうか」、そんな気がしてきます。
長引くスタグフレーションに変化の兆し
最近のブラジルはスタグフレーションに苦しんでいます。
実質GDPの伸び率は2014年が対前年比横ばい、2015年は同▲4%となりました。鉱工業生産指数はそれぞれ▲3%減、▲8%減と減少しています。このように経済活動が後退している一方で、物価上昇が続きました。消費者物価指数は年率で2桁に届くほど上昇しており、ブラジル中央銀行のインフレターゲット(+6.5%~+2.5%)を大きく上回る水準です。
2016年に入ってもこの傾向は続きました。実質GDPは2015年10-12月期が対前年同期比▲6%減、2016年1-3月期が同▲5%減となり、鉱工業生産、小売売上高のいずれも縮小が続きます。他方で、消費者物価は2015年年末から2016年年初に同+10%を超えていきました。中央銀行は政策金利を14.25%に張り付けて、物価抑制の姿勢を続けています。
しかし、足元では少し変化の兆候が見られます。内需を引き締めたことから輸入が減少し貿易収支が改善、それが経常収支の良化につながってブラジルレアル安の圧力が緩和しています。さらに、物価上昇率も徐々に低下し始めており、ブラジル中銀による6月末の発表によると、2016年末の物価上昇見通しは+6.9%とインフレターゲットの上限に近づくとされました。
ブラジルの財政状況は悪化しており、しかも政局が安定していないため、財政政策による景気対策の道筋をしっかりと描くのは難しい局面です。しかし、物価の沈静化が進むと金融緩和の余地が生まれます。米国の利上げがスローペースになりそうなこともプラス材料となりそうです。
相場を見る視点でいえば、「不況下の株高」に入ることができるのか、それはいつか、関心の高まる局面と言えそうです。
ボベスパ指数と上海総合指数は切っても切れない仲
さてもうひとつご覧いただきたいチャートがあります。それは先ほど見たボベスパ指数(青)を上海総合指数(赤)と並べた次のグラフです。
ブラジル最大の貿易相手国は中国です。そして、実体経済の結びつきと同様に株価の連動性も高くなっています。中国の景気減速や産業の構造調整の長期化が言われますが、株価には先見性があるとも言われますので、中国株式が上昇すればブラジルにも好影響を与えると予想できるでしょう。
以上、まもなく開催されるオリンピックで注目が集まるブラジルの株式市場について考えてみました。ご祝儀相場はないと思いますが、経済は転換点を迎えつつあると言えそうです。オリンピック・パラリンピック終了後も世界の投資家の注目を集めることになりそうです。
LIMO編集部