タイプ1「家のことは収入が低い妻の仕事」

Aさんとその夫は、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、夫婦ともテレワークで仕事をすることになりました。子供の通う幼稚園からも登園自粛を求められて、在宅で仕事と家事・育児を並行して進めなければなりません。「この緊急時だし、夫と協力して何とか乗り越えないと…!」と覚悟を決めていたAさんは、テレワーク初日、思いもよらぬ言葉を夫の口から聞かされることになります。

夫は、2LDKの自宅の中でも仕事をするのに十分なスペースを確保できるリビングの一画を指して、「じゃ、俺が広いテーブルを使うけどいいよね?年収も高いし、Aよりも集中して頭を使わなきゃいけない難しい仕事だからさ」と一言。

一瞬、呆気にとられたAさんは、中小企業に一般職として勤めています。大手企業勤務の夫にそんな風に言われてしまえば、収入も仕事内容も、確かにその通りだけど…と、少し不愉快な気分になりながらも認めざるを得ませんでした。

その後も、オンライン会議やSkype通話が入ってくるのはお互い様なのに、その度に夫は「俺は〇時に通話が入るから、その間Aは予定を入れないでね。あと子供が騒がしいと困るから静かにさせておいて!」と、当然のようにAさんに仕事を中断するよう言ってきます。そのくせ、Aさんが会議や通話をしている間、夫が子供を見ていてくれるということはありません。Aさんは次第に、“うちって、年収によって身分の高さが決まるところだったの?”と疑問を感じるようになります。

Aさんの夫による「年収マウント」は、仕事の話に留まりません。これまでは帰宅時間の早い自分がすべてやっていた食事の支度をはじめとする家事を、お互いに在宅勤務になったのだから少し協力してほしい、と伝えてみたAさん。すると、「もちろん何もしないとは言わないよ。でも、稼ぎの少ないAが家のことを多く負担するのは当然じゃない?」と返ってきたばかりか、「そもそも、俺とAの収入にどれくらい差があるのか、きちんと理解してる?一度、実働時間で割って時給を計算してみようか。同じ時間働いても稼ぐ給料が全然違うんだから、少ししか稼げない方が家のことをやったほうが家庭全体としても得だってこと、すごく簡単な算数なんだけど、それもわからないのかな?」と、一気にまくしたてられてしまいます。

たとえ言われた内容自体は一理あるものだったとしても、このような言い方をされて、果たして同じ屋根の下で気持ちよく暮らしていけるのでしょうか。Aさんは、しばらく返す言葉もなく、その場に立ち尽くしてしまったそうです。