新型コロナウィルスの世界的な大騒動で、一時、株価が大きく下落、円高が急激に進行しました。いわゆる「コロナショック」です。景気の先行きについて、不安になられる方がいる一方で、今がチャンスと捉えて運用を始める方が、増えています。

特にiDeCoとつみたてNISAは普段の関心が高かっただけに、口座開設が増加しています。そこで、みんなが気になっているiDeCo、つみたてNISA、この2つの制度について調べてみました。

【その1】意外と監督官庁が違う

似て非なるiDeCoとつみたてNISA。実は実施者や監督官庁が異なることは、意外と知られていません。

iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」と言い、将来受け取る年金の補完として作られた制度です。年金のための制度から分かるとおり、iDeCoの実施者は「国民年金基金連合会」という厚生労働省の所轄法人になります。

一方、つみたてNISAは金融庁が「貯蓄から投資へ」の流れを作るべく、英国で発祥した制度(ISA)を取り入れて作ったのが、日本のNISAです。また、つみたてNISAはNISAの制度が作られた後にできた、比較的新しい制度です。

つまりiDeCoは将来の年金のために、つみたてNISAは、当初は投資や運用がメインで作られた制度となり、前者は厚生労働省が、後者は金融庁が関わっていることがわかります。

厚生労働省や金融庁のHPに行くと、厚生労働省ではiDeCoが、金融庁のHPではNISAのことが詳しく説明してあります。

NISAに関しては、つみたてNISAが加わったことで、年金準備のための制度という意味合いが濃くなりました。ここが国民の認識に混乱を来たしている一つの要因なのかもしれませんね。

【その2】意外とある控除や、かかる税金とタイミングが違う

つみたてNISAが創設されたことで、401kやiDeCoと混同して認識されるようになってしまったのは残念なことです。

ただiDeCoとNISAの違いで、はっきりと異なる点があります。それは所得控除と税金です。

iDeCoは国民年金、厚生年金等の補完的側面が大きいため、以下の3つの税制優遇が受けられます。1つ目ですが、拠出中は掛け金が全額控除されます。さらに、運用益は非課税となります。年金として受け取る時には「公的年金等控除」、一時金として受け取る時は「退職所得控除」があります。

一方、NISA・つみたてNISAには、配当や譲渡益が非課税になるメリットはありますが、所得控除はありません。これはNISAが誕生した当時、本来NISAは投資への呼び水として作られた制度です。そもそも年金の補完的側面として考慮されてきたiDeCoとは異なります。

【その3】意外と投資できる金額が違う

利益に対して非課税のメリットを受けられるなら、いずれの制度でもできるだけ多く投資したいものですね。

NISAは毎年、続けて5年間、120万投資できますので、計600万の投資が可能です。ただし、投資可能期間が2023年までなので、今から600万の非課税投資枠を全部使うことは、残念ながらできません。

一方、つみたてNISAは年間40万まで、2037年末まで投資が可能です。現在、つみたてNISAは2037年までの制度とされていますので、投資信託の購入を行うことができるのは2037年までです。2037年中に購入した投資信託についても20年間(2056年まで)非課税で保有することができます。

また、2016年にジュニアNISAという新制度が加わったことで、未成年であっても、毎年80万円、最長5年間、計400万円の非課税枠を利用しての投資が可能となりました。ただし、こちらも2023年までが非課税での投資期間となっていますので、今から400万円の枠を使いきることはできません。

いずれにせよ、うまく使うことができれば、一家で大きな非課税枠を得る権利があるのは間違いないでしょう。

一方、iDeCoですが、年金の種類によって、掛け金が異なります。自営業者の場合、条件はありますが、月68,000円を掛け金として拠出することが可能です。会社員の場合は少し複雑で、厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合は月12,000円、企業型年金のみを実施している場合は月20,000円、前述以外の場合は月23,000円、公務員や私学共済加入者は月12,000円となっています。

専業主婦(夫)の場合は月23,000円の拠出が可能です。ちなみに2018年から一定のルールがあるものの、年単位での拠出も可能となっています。

いずれにせよ、年齢や職業、家族構成、投資や拠出をスタートした時期によっても、非課税の枠は異なってくるので、どちらが多く投資できるかについては、一概に判断できないようです。

【その4】意外と選べるファンドが違う

iDeCoもNISAも証券会社、銀行等の金融機関で専用口座を作成することが必要です。手続きには少し時間がかかりますが、無事口座が開設されれば、いよいよ運用がスタートします。

どのようなファンドで運用するか迷うところですが、選べるファンドは限定されています。どちらも共通しているのは、長期投資や分散投資に向いたファンド、ノーロド(買付手数料)や信託報酬の上限が低いファンドが選ばれているということです。

つみたてNISAはETFも選択できますが、iDeCoはできません。またiDeCoは元本確保商品を選択することができますが、NISAにはそのラインナップはありません。NISAの方が投資性の高い商品を選択することができそうです。

お金に余裕があればiDeCoとつみたてNISA、併用してもよい

iDeCoとつみたてNISAはそもそも併用が可能です。どちらかを選ぶ必要は全くなく、両方に投資することも可能です。それぞれの事情や状況により、有利であったり、不利であったりする場合が出てくるので、うまく利用した方がよさそうです。できれば、身近なファイナンシャル・アドバイザーに相談してみるのもいいかもしれませんね。節税は国民に与えられた権利です。

参考資料(Reference)