2020年4月、公的介護保険制度がスタートして20年目を迎えました。
介護サービスや雇用保険の介護休業給付金など、介護に関する公的制度は、ひと昔前と比べると格段に整備されつつあります。
とはいえ、急速な高齢化にともない、家族の介護と仕事の両立に悩む人は依然として多いのが現状でしょう。
そこで今回は、「介護と仕事」にまつわる、厚生労働省などの統計調査をみていきます。
まず、要介護(要支援)認定を受けている人の数からです。
介護が必要な人はどれくらいいるのか
まず、内閣府と厚生労働省の資料(※)をもとに、要介護(要支援)認定を受けた人の数の推移をみてみましょう。
- 2000年4月末・・・約218万人
- 2005年4月末・・・約411万人
- 2010年4月末・・・約487万人
- 2015年4月末・・・約608万人
- 2020年1月末・・・約667万4000人(うち男性210万5000人、女性456万9000人)
この20年間で約3倍増えていることになりますね。
※参考
2000~2015年:「要介護度別認定者数の推移」内閣府
2020年:「介護保険事業状況報告の概要 (令和2年1月暫定版)」厚生労働省
ここから、厚生労働省がほぼ5年おきに実施している「就業構造基本調査」をもとに、介護と仕事についての数字をみていきます。
仕事と介護の両立
では、総務省統計局の「就業構造基本調査(※)」から、15歳以上で介護をしている人の有業率についてみてみましょう。
仕事をしている割合(有業率)
2012年
- 介護をしている人・・・約557万4000人(15歳以上人口の約5%)
- 上記のうち有業者・・・約291万人(有業率:男性65.3%、女性44.9%)
また、調査結果については以下のように言及されています。
- 介護をしている者のうち、約5割が60歳以上
- 介護をしている者の有業率は、男女共に介護をしていない者に比べ低い
2017年
- 介護をしている人・・・約627 万6000人 (15歳以上人口の約5.7%)
- 上記のうち有業者・・・約 346 万3000人(有業率:男65.3%・女49.3%)
こちらの調査結果については以下のように言及されています。
- 2012年と比べると,2017年は介護をしている女性の有業率が「70 歳以上」を除く全ての年齢層で上昇
- 特に「40 歳未満」及び「40~49 歳」で、有業率の伸びが大きくなっている
介護離職
次は、介護・看護のために過去1年間に前職を離職した人の数の推移です。
- 2007年・・・約14万5000人 (男2万6000人・女11万9000人)
- 2012年・・・約10万1000人 (男2万人・女8万1000人)
- 2017年・・・約9万9000人 (男2万4000人・女7万5000人)
総数はやや減少傾向にあり、2012年から2017年にかけてはほぼ横ばいです。また、女性が占める割合は減少傾向にはありますが、8割前後で推移しています。
※参考 「就業構造基本調査」総務省統計局
2012年:「平成24年就業構造基本調査」
2017年:「平成29年就業構造基本調査」
ではここで、同年度(2017年度)の「雇用動向調査結果」から、離職率の特徴や傾向を示すデータをご紹介します。
介護・看護理由の離職率の傾向
2017年の1年間で「介護・看護理由の離職率」が高かった「就業形態・年齢階級」は以下のようになっています。
男性
- パートタイム労働者60~64歳・・・0.6%
- 一般労働者20~24歳・・・0.5%
- パートタイム労働者20~24歳・・・0.4%
女性
- パートタイム労働者55~59歳・・・1.2%
- パートタイム労働者60~64歳・・・0.7%
- パートタイム労働者65歳以上・・・0.5%
- 一般労働者50~54歳・・・0.5%
介護の頻度
次に「介護をしている雇用者」について、介護日数別の割合を男女・雇用形態別にみていきます。
正規の職員・従業員
男性
- 月に3日以内・・・32.5%
- 週に1日・・・22.6%
- 週に6日以上・・・20.3%
女性
- 週に6日以上・・・30.7%
- 月に3日以内・・・25.1%
- 週に1日・・・19.0%
非正規の職員・従業員
男性
- 週に6日以上・・・29.8%
- 月に3日以内・・・22.9%
- 週に1日・・・15.1%
女性
- 週に6日以上・・・32.9%
- 月に3日以内・・・20.7%
- 週に1日・・・17.3%
仕事を持ちながら介護をしている女性の割合は上昇している一方、介護離職の割合や、仕事と介護を両立させた場合の介護日数などは女性の方が高め、という傾向は共通しているようです。
高齢者の中には、親族以外が自宅で家事をすることを好まない人もおり、家族の中でも妻や実子(特に娘)が親の介護の主な担い手となっている、というケースもよく耳にしますね。
そこで、ちょっと脇道にそれますが、次では内閣府が行った意識調査の結果の一部をご紹介します。
2017年に内閣府が全国の 55 歳以上の男女3,000 人を対象に実施した「平成29年 高齢者の健康に関する調査」では、日常生活や介護・福祉などに関する事柄の聞き取りが実施されました。
そのなかの「介護が必要になった場合の介護を依頼したい人」に関する回答状況をごらんください。
男性の場合
- 配偶者・・・56.9%
- ヘルパーなど介護サービスの人・・・22.2%
- 子・・・12.2%
- 兄弟姉妹・・・2.0%
- 子の配偶者・・・0.5%
女性の場合
- ヘルパーなど介護サービスの人・・・39.5
- 子・・・31.7%
- 配偶者・・・19.3%
- 子の配偶者・・・3.0%
- 兄弟姉妹・・・1.5%
また調査結果によると、都市規模別や健康状態別の大差はみられなかったものの、
・「配偶者」を希望する人は、女性では年齢の低い層ほど高い
・「子」を希望する人は、男女とも年齢の高い層ほど高い
となっています。
「配偶者」で男女の差が大きく開いている点はなんとなく頷ける気もしますね。
また「子の配偶者」の割合が少なく、その10倍以上の人が「ヘルパーなど介護サービスの人」や「子」を希望していることは、公的介護サービスの整備や“長男の妻”などへの意識の変化が進んでいる一つの表われかもしれません。
まとめにかえて
今回は「介護」と「仕事」に関する数字を追ってみました。
これは介護に限ったことではありませんが、特定の家族だけに負担が偏らないことが大切ですね。
介護休業制度や介護サービスなど、公的な支援を併用・活用することを考える人の割合は、より一層増えていくと予想されます。
家族や身近な人に介護が必要になったら、さらに自分自身が介護される側になったら・・・をイメージしてみるきっかけにしていただければと思います。
参考URL
「要介護度別認定者数の推移」内閣府
「介護保険事業状況報告の概要 (令和2年1月暫定版)」厚生労働省
「平成24年就業構造基本調査」厚生労働省
「平成29年就業構造基本調査」厚生労働省
「平成29年雇用動向調査結果」厚生労働省
「平成29年 高齢者の健康に関する調査」厚生労働省
池上 翠