マーケットサマリー

インド株式市場は、2020年1月下旬以来、新型コロナウイルスの感染拡大を背景とした世界的な株式市場の急落を受けて大幅に下落。インド国内でも感染が拡大しており、政府は3月24日、国内全土を封鎖すると発表。債券市場は、昨年12月下旬以降、世界的な金融緩和の動き、インド準備銀行(RBI、中央銀行)による金融緩和を支えに堅調(利回りは低下)に推移している(4月6日現在)。

トピックス

全土封鎖で新型コロナ感染拡大防止に取り組むインド

世界中で新型コロナウイルスの感染が急拡大するなか、巨大な人口、密集都市地域、非組織労働力を抱え、公的医療が不十分なインドは、今後数週間、あるいは数ヶ月間、厳しい情勢下に置かれると懸念される。

インドで確認された感染者数は4月13日現在、9,152人、死者数は308人となっている。感染例の大多数は国外から持ち込まれ、その他は海外渡航歴がある人との濃厚接触で発生したものであり、これまでのところ市中感染が拡大している証拠はないと言われている。しかし、感染判定検査の数が限られているため、公表されている患者数、死者数はいずれも大幅に過小報告されている可能性があり、感染者数は今後大幅に増加するとの見方もある。

感染防止策を強化するも、効果は不透明

インド政府は、諸外国の政府や主要中央銀行が導入した対策を参考にして、国民を新型コロナウイルス感染症から守るとともに、感染防止策の経済への影響を和らげるために様々な対策を打ち出している。当局が感染防止策を次々と講じ始めたのは2月初めで、感染者数が増えはじめた3月上旬には行動抑制策が強化された。さらに3月22日から5月3日までの期間は、すべての国際民間旅客航空便の国内への着陸を禁止した。

また、3月24日夜にはモディ首相がテレビ演説で、3月25日から21日間の全土封鎖を突然表明した(その後5月3日まで延長)。インドの総人口を考えると、世界最大規模の外出禁止措置であることは言うまでもない。

強化された対策

現在、世界人口の相当数が何らかの形でロックダウン(都市封鎖)の影響を受けているが、モディ政権が発令した封鎖の規模は並外れており、それに伴う経済的コストも膨大だ。それでも政府は、市中感染の拡大を抑え、大規模な公衆衛生の危機を回避するためには全土封鎖が不可欠と判断した。

全土封鎖により食料品店、薬局、倉庫、通信、電力、銀行、証券取引所を除き、国内経済の大部分は3週間の停止を余儀なくされている。ちなみに、2016年に高額紙幣が廃止された際でも経済活動が止まることはなかった。

全土封鎖の開始直後、最も打撃を受ける分野や社会的弱者を支援するため、総額230億米ドル(国内総生産の0.9%)相当の緊急経済対策が発表された。

対策には、①8億人を対象とする3ヶ月間の食料配給(米または麦)、②2億人の女性、5000万人の地方の非農業部門労働者、8700万人の農業従事者、3000万人の高齢者への現金支給(銀行口座への払い込み)、③中小企業従業員のうち800万人の低賃金労働者について、退職基金掛金3ヶ月分を肩代わりすることで雇用を維持することなどが含まれている。

予想される国内景気の落ち込みを考えると、こうした弱者支援策だけでは不十分のように見えるが、政府は特定の産業向けの緊急支援対策を適宜打ち出す方針を約束している。