新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威をふるうなか、学校の一斉休校、保育施設の相次ぐ臨時閉鎖などにより、多くの子どもたちの新年度が想定外の形で始まりました。

保護者の側も、テレワークへの移行や休業、雇い止めなど、働き方や収入に直結する変化を受け止めながらの子育ては長期戦となりそうです。

この状況で「この先、教育費はいくらかかるのだろう?」と不安になる人も多いでしょう。

「幼児教育・保育無償化」スタートから遅れること半年。
この春、「私立高校実質無償化」と「高等教育等(大学・専門学校)無償化」が始まり、国の「3つの教育無償化」制度が出そろいました。

そこで今回は、子どもの教育にかかるお金と、これらの制度について整理していきたいと思います。

各学校別「学習費の総額」

では、子ども一人あたりにかかる教育費って、いったいどれくらいなのでしょう。

文部科学省や厚生労働省の調査結果によると、2018年度(保育所は2017年度)の子ども一人あたりの保育費(※1)・学習費(※2)の総額は以下の通りです。

・保育所 25万3656円
・公立幼稚園 64万9088円
・私立幼稚園 158万4777円
・公立小学校 192万6809円
・私立小学校 959万2145円
・公立中学校 146万2113円
・私立中学校 421万7172円
・公立高等学校(全日制) 137万2072円
・私立高等学校(全日制) 290万4230円

また、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」によると、大学卒業までに必要な入在学費用(※3)(子供1人当たりの費用)は以下の通りです。

・大学1年次  245万3000円
・大学2~4年合計 470万7000円(※4)

さらに、これを国公立・私立別、文・理系別にみると
・国公立大
  入学費用 80万1000円
  在学費用 459万2000円

・私立大学文系
  入学費用 90万4000円
  在学費用 640万4000円

・私立大学理系
  入学費用 85万5000円
  在学費用 741万2000円
となっています。

また、同調査によると、自宅外通学をする学生1人あたりの年間仕送り額は平均90万8000円、自宅外通学を始めるためのアパート敷金や家具などの購入費は平均37万4000円、となっています。

進学する学部の分野や、自宅から通学するかどうかにより、かかる費用にはかなりの差が出てくるわけです。

きょうだいが多いご家庭などは、家計への負担が気になるところですよね。
次では、「家計への負担」を軽減するために作られた、国の「教育無償化」制度についてみていきましょう。

3つの「教育無償化」って?

2020年4月現在、家庭の教育費の負担を軽減するために実施されている「教育無償化」は、「幼児教育・保育の無償化」「高等学校等就学支援金」「高等教育の修学支援新制度」の3本立て。

国の「教育無償化」制度のイメージ1/5

国の「教育無償化」制度のイメージ

文部科学省の資料などをもとに、編集部作成

では、給付対象となる条件や申請方法など、制度ごとにみていきましょう。

詳しく知りたい、各制度のしくみ

就学前

幼稚園・保育所などに通う、就学前の子どもたちへの支援制度を、厚生労働省の「幼児教育・保育の無償化について知る」を参考にまとめてみました。

幼児教育・保育の無償化の主な例2/5

幼児教育・保育の無償化の主な例

内閣府の資料をもとに編集部作成

  • 3~5歳児クラス

    すべての子どもたちの利用料が無料
      子ども・子育て支援新制度の対象とならない幼稚園は、月額2万5700円まで

  • 0〜2歳児クラス

    住民税非課税世帯は無料
     保育所等を利用する最年長の子供を第1子とカウントし、第2子は半額、第3子以降は無料。
     ただし、年収360万円未満相当世帯は、第1子の年齢は不問

  • 幼稚園の預かり保育

    3~5歳児クラス:最大月額1万1300円まで無償
無償化の対象となるためには、「保育の必要性の認定(※5)」が必要

  • 認可外保育施設

    3~5歳児クラス:月額3万7000円まで無償
    0~2歳児クラス:住民税非課税世帯が対象。月額4万2000円まで無償
      ※無償化の対象となるためには、「保育の必要性の認定」が必要を受ける必要があります。

  • 障害児の発達支援

    満3歳になって初めての4月1日から小学校入学までの3年間
     ・幼稚園、保育所、認定こども園等と併用する場合は、両方とも無料。
     ・利用料以外の費用(医療費、食材料費等)は保護者負担。

次は、高校等の授業料無償化についてみていきましょう。

高校など

次に、「高等学校等就学支援金」について、文部科学省の資料をもとに整理しました。

  • 対象となる学校

高等学校、特別支援学校(高等部)、高等専門学校(1~3年生)など

  • 支援の対象となる条件

年収約910万円未満の世帯

就学支援額のイメージ(全日制私立高校の場合)3/5

就学支援額のイメージ(全日制私立高校の場合)

文部科学省の資料をもとに編集部作成

大学・短期大学・高等専門学校・専門学校

最後に、高校卒業後の「高等教育」の無償化についてご紹介します。
高等教育の無償化制度は、「授業料等減免」「給付型奨学金(返済義務なし・生活費などの支援)」の2つを柱としています。また、

  • 入学後の学業成績などによっては支援が打ち切られる可能性がある
  • 対象となる世帯年収が低めに設定されている(年収目安380万円
  • 対象となる大学などの教育体制や経営状態が問われる

などの要件を満たす必要がある点は、幼保や高校と大きく異なる点でしょう。

支援対象となるためのハードルは高めですが、学費稼ぎのアルバイトに忙殺されて学業がおろそかになってしまう学生をある程度減らす効果が期待されます。

それでは、文部科学省の「高等教育の修学支援制度について」をもとに、
制度の概要をみていきましょう。

  • 対象となる学校

大学・短期大学・高等専門学校・専門学校
対象となる学生
住民税非課税世帯、及びそれに準ずる世帯の学生※(年収目安380万円)

  • 対象者の要件

      ・・進学前は成績だけで否定的な判断をせず、レポートなどで本人の学修意欲を確認 ・進学後の学修状況に厳しい要件

  • 大学等の要件(国、又は自治体による要件確認を受けた大学などが対象)

      ・・学問追究と実践的教育のバランスが取れた大学等が対象となる

      ・・経営に課題のある法人の設置する大学などは対象外

では、次は、授業料減免の上限額や給付型奨学金の額についてみていきましょう。

  • 支援の内容

① 授業料等減免制度
 各大学などが、定められた下記の上限額(※)まで授業料の減免を行い、減免に要する費用は公費から支出。

授業料等減免の上限額(年額)(住民税非課税世帯)4/5

授業料等減免の上限額(年額)(住民税非課税世帯)

文部科学省の資料をもとに、編集部作成

② 給付型奨学金
●日本学生支援機構から各学生に支給される
●学生が学業に専念するため、学生生活を送るのに必要な学生生活費をまかなえるよう措置。

給付型給付額(年額)(住民税非課税世帯)(※)5/5

給付型給付額(年額)(住民税非課税世帯)(※)

文部科学省の資料をもとに、編集部作成

※上記の「授業料等減免の上限額」「給付型給付額」ともに、「住民税非課税世帯」の年額です。
住民税非課税世帯に準ずる世帯の学生の場合は、世帯年収に応じて、住民税非課税世帯の学生の2/3または1/3が支援されます。

おわりに

みなさん、いかがでしたか?

「幼保から大学まで」、子どもの学びを支える国の制度がひと通り出そろいました。

こんにち私たちを取り巻く経済状況はかつてなく厳しい状況ですが、これらの制度を味方につけて、過度に恐れず手堅い方法で、教育費の準備を進めていきたいですね。

専用の通帳に児童手当を全額積み立てる、学資保険に加入する、など、お金に「色」をつけながら貯めていく方法は、進捗状況の「見える化」につながり、モチベーションも高まるのではないかと思います。

また、国の優遇税制制度の「つみたてNISA」や「iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)」を活用した資産運用を視野に入れてみてもよいかもしれませんね。

教育費は、「いつ・どれくらい」必要となりそうか、比較的予想が立てやすい出費ではないかと思います。
お子さんの進学時期、家族のライフプランなどに合わせ、一番ご自身に適した方法で備えていきましょう。

【補足】

※1「保育費」
参考:「平成27(2015)年 地域児童福祉事業等調査の概況」厚生労働省
「1世帯における児童1人あたりの月額保育料(平均値)」より算出しています。

※2「学習費」
参考:「平成30年度(2018年度)子供の学習費調査の結果について」文部科学省
文部科学省の基準では、調査対象の教育費を「学習費」と表しています。
学習費には、授業料・教科書代・学用品・制服費などを含む「学校教育費」、「学校給食費」、そして「学校外活動費」として通塾費や通信教育費、習い事などの費用を含めて算出しています。

※3在入学費用
「入学費用」には受験費用、学校納付金、入学しなかった学校への納付金など、「在学費用」は「学校教育費」(授業料・通学費など)と、「家庭学習費」参考書の購入費など、を指します。

※4 参考:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果
同調査の月額(156万9000円)より算出しました。

【参考URL】
平成27(2015)年 地域児童福祉事業等調査の概況」厚生労働省
平成30年度 子供の学習費調査の結果について」文部科学省
教育費負担の実態調査結果」日本政策金融公庫
幼児教育・保育の無償化」内閣府
高等教育の修学支援新制度」文部科学省
幼児教育・保育の無償化について知る」厚生労働省
幼児教育・保育の無償化の主な例」内閣府
幼児教育・保育の無償化概要」内閣府
高等学校等就学支援金制度」高校生等への修学支援」文部科学省
高等学校等就学支援金」文部科学省
高校生等への修学支援リーフレット」文部科学省
高等教育の修学支援制度について」文部科学省
つみたてNISA」金融庁
iDeCo」(イデコ・個人型確定拠出年金)iDeCo公式サイト
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池上 翠