「共感の欠如」が怒りを植え付けた

もちろん、すべての若者が「ブーマーリムーバー」に賛同しているわけではないし、すべてのブーマーが自信過剰なわけではありません。ただ、アメリカでは極端な偏見を持つ人が増えている傾向は目立ちます。

ビジネスコラムニストのラナ・フォルーハー氏はファイナンシャルタイムズに掲載した記事(※3)に、「ブーマーリムーバー」のような発想は「社会での共感の欠如」を反映しているとも言えるといい、自身が以前に書いた記事の下記のような興味深い見解を紹介しています。

・「今の時代を理解するには心理学の用語が分かりやすい。心理学的に人は2つのタイプに分けられる。誰かが勝てば誰かが負ける、ゼロサム式と割り切る人(被害妄想型)、正誤をはっきりさせず、人との繋がりを大切にする人(鬱型)。そして前者の世界には、「共感」の存在は薄いと言える」

・「これは、人だけではなく国家でも言えることで、アメリカは被害妄想型の傾向が強く、その中でも被害妄想型の人は2つのタイプに別れる。1つは、嫌悪を植え付けようとする保守派の人。もう一方は、神に祈りを捧げる人達を小バカにするような進歩主義の民主派の人。どちらもが互いを気にかけず、どちらも互いに対して激怒しているのだ」(※4)

今回の「ブーマーリムーバー」については環境問題を訴え続ける若者の意見を理解しようとせず散々無視してきた強欲なブーマーが、若者に共感より嫌悪感を植え付けた結果といえるかもしれません。

同時に若者は、自分達自身もブーマーが築きあげた物質的に恵まれた環境の恩恵を何かしら利用しているということも認めず、また、ブーマー以外にも持病で感染ハイリスクの人もいるということを配慮しない身勝手さも否定できません。

日本でも「老害」という言葉で高齢者を嫌う人もいます。それなりの理由があるのでしょう。どの国でも、社会での共感が欠如しているのかもしれません。

(※1)“Convincing Boomer Parents to Take the Coronavirus Seriously” The New Yorker
(※2)“Coronavirus Reactions” STAANCE, Inc.
(※3)“Covid-19 and the generational divide” The Financial Times
(※4)“Are you paranoid or depressive?” The Financial Times

美紀 ブライト