高品質iPS細胞樹立と世界流通
福田氏は、黒いマウスから作ったiPS細胞と白いマウスの受精卵を混ぜることにより白と黒のまだら(斑)のマウス(キメラマウス)を作成し、iPS細胞の品質を評価したところ、そのiPS細胞はES細胞と同等のキメラ寄与率を達成した。
このスーパーiPS細胞は精子にも分化できる能力を持つ、つまりES細胞レベルの高品質iPS細胞樹立が可能である。これはヒト細胞でも同様の効果があり、山中研との共同研究により世界に流通させることを目指している。
心臓再生医療への治療戦略
心臓再生医療への治療戦略として、選択的心筋細胞の分化誘導(3段階心筋再生法:ヒトES細胞/ヒトiPS細胞から前方中胚葉誘導→心筋誘導→心筋増殖)に取り組み、成熟心室筋細胞の特異的分化誘導に成功した。純化ヒトiPS心筋細胞の多くがマーカー(MLC2v)陽性の心室筋細胞であり、心室筋型の活動電位を示し、刺激薬IsoproTerenolへの反応も良好なことが判明した。
未純化のiPS細胞由来心筋細胞を用いた移植治療では、腫瘍形成があることから、心筋細胞の純化精製に取り組んだ。ES/iPS細胞と心筋細胞のエネルギー代謝の相違点を利用して、無グルコース条件下でグルタミンを除去することで効率よく未分化幹細胞を死滅させることで、心筋細胞の純化精製に成功した。
この慶應法による純化精製後のiPS細胞含有率は0.001%以下を達成している。ヒトES由来精製心筋細胞では、腫瘍形成は認められなかった(8週間)。
また福田氏は、こうした数々の偉大な成果を達成しながら、自動大量培養プラントによる再生心筋細胞の製造など、再生医療の産業化に向けた評価基盤技術の開発も進めている。
心筋球(心筋微小組織)移植を採用
再生心筋細胞の移植に際しては、移植心筋の生着は最大3%にとどまるという問題が横たわる。
各種移植法を見ると、単離浮遊心筋細胞は、トリプシンなどの処理により容易に用時調達ができる。輸送の問題も解決するという利点の一方、酸素処理により細胞が障害、移植針の穴から流失(移植効率が著しく低い)という欠点がある。