園のことが大好きな子どもにとっては、小学校へ上がるという喜ばしいライフイベントも、大きな葛藤に悩まされる原因となります。

園のお友達と離れたくない。先生とも離れたくない。でも、小学校に通っているおにいさん、おねえさんのようにもなりたい

不安と期待で胸がいっぱいになっている状態が、卒園を控えた子どもたちのリアルなのではないでしょうか。

子どもの不安な気持ちを認め、寄り添う姿勢で

楽しみ・寂しい・不安・期待…と、卒園を控えた子どもたちの感情は大忙し。ふとした瞬間に小学校への楽しみや期待が表れたかと思えば、とつぜん園を離れる寂しさや小学生になることへの不安に襲われたりと、常に心に大きな波が押し寄せています。

子どもによっては、夜寝る前に布団の中で泣き始めたり、チックのような症状が出たりするケースも。それくらい、子どもにとって卒園・入学は大きくて衝撃的な出来事なのです。

親も突然様子が変わってしまった我が子を目の前にして、戸惑うことが少なくありません。何と言葉をかけてあげればいいのか、どんなふうに接してあげればいいのか。小学校の生活に慣れれば落ち着いてくるだろうとわかってはいながらも、自分の感情を持て余して困っている我が子を見れば、何かしてあげたいと思うのも親心というもの。

実のところ、親だって期待と不安を抱えています。学校生活に必要なものを揃えたり名前つけをしたりと、入学までに済ませておかなければいけないことに追われながらも、「小学校にも楽しく通ってくれるだろうか」と心配が頭をよぎります。

親の気持ちにも波ができる。それでは子どもの気持ちが不安定になるのも、無理はないですね。とりあえず見た目だけでもいいので、大人はドーンと構えていましょう。

しかし、どれだけ「大丈夫だよ」と伝えても、当の子どもはいっこうに「わかった!」と理解して、元気を取り戻してくれる様子が見られない──。

何も効果が出ていないように見えるかもしれませんが、子どもにはちゃんと届いています。「ママが自分の気持ちを理解しようとしてくれた」「パパがたくさん話を聞いてくれたという事実は、子どもの心を落ち着かせる材料となります。不安な気持ちを解消しようなんて、大きなことをやろうと頑張らなくても大丈夫です。

子どもの心からあふれ出てくる言葉や涙に、しっかり反応して“うん、うん”と話を聞いてあげることこそが、なによりの寄り添いだと思います。

こうした寄り添う姿勢は、新型コロナウイルスの感染対策で園の行事が中止になったり、休園で友達と会えずに子どもが気落ちしている時にも、ぜひ心がけたいもの。忙しさの中でもできる範囲で、子どもの思いに耳をかたむける時間をつくりたいですね。