もう一つの事例では、グーグルが本年2月中旬にクラウド・コンピューティングのルッカー社の買収(約3,000億円)を完了したことが報じられています。これは今回の騒動の時期と重なります。ことほどさように、長期的な視点で資産形成や投資を考えるのであれば、タイミングはそれほど重要ではないことが分かります。

以前のウイルス禍で株価はどうなったか

前回のSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)が発生して、その後終息した時期と株価の動きを見てみましょう。SARSは02年11月から03年7月、MERSは韓国で発生・終息した15年4月から15年12月とします。

以下の図表1では、SARSでもMERSでも発生時期直後に株価は下がり、終息宣言前に株価が底を打ち反転しているのが分かります。もちろん、それよりも株価へのインパクトが大きいITバブル崩壊やリーマンショックのほうが、より大きな影響があったことは言うまでもありません。

図表1:SARS/MERS発生時とニューヨークダウの推移

出典:macrotrends(期間:2000年2月末から2020年2月末)

おわりに

今回の新型コロナウイルス拡大のように、原因も対処方法も明らかではない新種の疾病に対して人々は不安になるものです。その気持よく分かります。

ただし先人の相場格言には、「強気相場は、悲観の中に生まれ、懐疑の中に育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」というものがあります。今回の騒動は、次の強気相場が悲観の中に育つかどうかを証明するよい機会かもしれません。

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太田 創(一般社団法人日本つみたて投資協会 代表理事)