東京オリンピックの開催まで半年を切ったというのに、いまだにボランティアの位置付けについては混乱があるようだ。私(ライター)は、大会ボランティアとして参加する予定だが、評判が悪いまま大会に参加するのは不安だ。そこで組織委員会を取材。ボランティア目線でかなり突っ込んだ質問もしたところ、意外な事実が見えてきた!
シリーズ第4回は、派遣社員とボランティアの間で混乱は起きないのか?という疑問を中心に聞いている。
取材に答えてくれた、公益財団法人 東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の担当者は以下の通り。
総務局 ボランティア推進部 部長 兼 人事部 担当部長 傳 夏樹氏
総務局 ボランティア推進部 ボランティア推進課長代理 古瀬 浩一氏
総務局 人事部 採用課長 朱 賢太氏
<取材・文/下原一晃 フリーライター。東京五輪・パラリンピックに、大会ボランティア(フィールドキャスト)および、東京都の都市ボランティア(シティキャスト)として参加予定>
ボランティア経験が少ないスタッフで大丈夫?
――ここまでのお話で、そもそも組織委の派遣社員と大会ボランティアとでは、所属も役割も指揮命令系統もまったく別であり、現場で簡単に代替できるようなものではないとのことでした。
それは理解できたのですが、それでも組織委の派遣社員とボランティアが一緒の現場で仕事をする(活動する)ことには変わりはありません。組織委の派遣社員がボランティアに直接指示をすることはないとしても、ボランティアリーダーを通じて依頼をすることになると思います。
組織委の派遣社員が仮にスポーツイベントやボランティアに参加した経験が浅い場合、現場で混乱することはありませんか。
朱:具体的にはどのようなことを想定されていますか。
――実際の例でご紹介したほうがわかりやすいと思います。2019年7月21日に東京2020大会のテストイベントとして、「READY STEADY TOKYO-自転車競技(ロード)」が行われました。
多くのボランティアがコースサポーター(沿道整理)として参加しましたが、このボランティアに指示を出すスタッフが、ボランティアの出席を取るのを忘れたり、ユニホーム代わりのキャップを支給しなかったり、ボランティアの活動内容や活動場所の指示が曖昧でボランティアが混乱するといったトラブルが多くの現場で頻発しました。
あまりにも混乱がひどく、参加したボランティアに対して後日、組織委員会の会場運営担当部長名で謝罪メールが届いたほどです。東京2020大会で同様なことが起こらないかと心配です。
古瀬:トラブルに関して、参加いただいたボランティアの皆さんには、大変ご不快な思いをおかけして申し訳ございませんでした。
背景を申し上げると、自転車競技(ロード)は一都三県にまたがる十数の自治体にご協力いただき、それぞれ、コースサポーターと呼ばれるいわゆる「ボランティア」を募集しました。さらに、そのボランティアのまとめ役として「コントラクターAD」と呼ばれる委託スタッフを各自治体が雇用し運用も行いました。これは他の競技とは大きく異なるところです。