1段階フェーズが上がった海外邦人へのリスク
しかし、現在、海外邦人へのリスクという視点から考えた場合、1段階フェーズが上がったと言えるかも知れない。
日本における感染は、関東を中心に北海道から沖縄など各地に拡散し、中国への渡航歴もない日本人の間でも感染が広がる事態となり、中国を除いては感染最多国という状況にある。
また、クルーズ船における感染拡大と乗客の長期滞在の問題で、それに疑問や批判を呈する海外メディアも増えている。
こういった状況から、ミクロネシアとキリバス、ツバルとニウエの南太平洋4カ国は日本からの入国を禁止したが、この“長期化”はさらなる入国制限だけでなく、“日本は感染源国”というイメージを広めてしまう恐れがある。
特に、欧米諸国では、アジア系への差別や嫌がらせが相次いでいるというが、各国では、近年、移民や難民など外から来た者への排斥的な流れが強まっている。
それは、1つに極右テロ、白人至上主義テロという形で大きな社会問題となっているが、近年、イスラム教やユダヤ教権益(教徒)などを狙ったテロ事件が各国で増加傾向にある。
イスラム教徒やユダヤ教徒への事件と比べると、アジア系への事件は少ないが、彼らにとって都合の悪い存在となれば、当然アジア系も標的となる。
先月からこれまでのリスクは、アジア系ということで邦人が巻き込まれるリスクだったと言える。しかし、現在の状況の長期化は、海外邦人が直接被害に遭うリスクを高める。
そういった形で被害を被る日本人も少数かも知れないが、日本が感染源国と認識されればされるほど、海外にいる日本人にとってはより直接的なリスクとなろう。
和田 大樹