「彼は本当に秀才だった」と役員から何度も言われましたが、筆者や同僚の目から見れば「PCも使えない、デイリー業務も事務作業もできない、ただの人」でした。秀才と言われていた理由がわからないと何度も同僚と首をひねったものです。

その人の厄介なところは、ほかの社員が忙しくしているときに「この課題、やってみろ」と不急不要の仕事を振ってくること。たとえば、「あの業界の動向を調べてレポートを書いてみろ」とか「あの企業の業績を分析してみろ」などと言われるのです。

若手のアナリストに言うのならわかりますが、筆者が働いていたのはウェブマーケティング部門。とはいえ、「証券会社で働いているのだからそれくらいできるべきなのかな」と忙しい中でモヤモヤすることも。その人なりに「若い社員たちを育てるための課題」を与えてくれているのだろうとわかっているだけに悩んだものです。

ほかにも、PCの使い方や専門端末の使い方、事務手続きの方法などをレクチャーする必要もあり、それにも時間を使います。同僚たちもその人に教えることが日々の仕事の一部になっていて「後輩でも新入社員でもない人相手になぜ教えなければならないの…?」と不満が溜まっていました。

こうして人が少ない中で周囲の社員の負担が増えるということも、一つの弊害ではないでしょうか。