今度は、入学定員充足率のハードルを80%に下げてみます。これは、文科省が入学定員の8割入学を1つの判断基準にしているからです。“定員の8割確保できればよし”ということでしょうか。
すると、平成8年度は99.3%とほぼ全校が満たしたのに対して、平成30年度は88.8%に低下しました。これは、全体の約11%の私立大学で、入学定員に▲20%以上の欠員が生じたことを意味します。
見た目は入学定員充足率が改善しているが…
一方で、前述した入学定員充足率(100%、80%超)は、年々徐々に改善しています。昨年度(平成29年度)との比較で見ても、100%超が+3.3ポイント改善(60.6%→63.9%)、80%超が+4.3ポイント改善(84.5%→88.8%)となりました。
ちなみに、入学試験時にリーマンショックの直撃を受けた平成20年度は、100%超が52.9%、80%超が72.7%でしたから、ボトムから見ればこの10年間で大幅な改善を遂げたと言えましょう。
確かに、改善したことは喜ぶべきことです。しかし、その背景には、各校が年を追うごとに定員数を減らしており、また、各校が合格基準のハードルを下げた可能性のあることが見逃せません。
私立大学の約4割が“営業赤字”という厳しい収益状況
次に、私立大学の収支状況を見てみましょう。ここでは、帰属収入(納入学費、寄付金、補助金等)から支出(人件費、教育研究費、減価償却費などほぼ全ての費用)を差し引いた「帰属収支差額」が重要です。これは、一般企業(金融を除く)の“営業利益”に近いものと考えていいでしょう。