デビュー20周年の年に当たる2019年の氷川きよしは、SNSでの投稿やテレビ出演で美についてのこだわりについて語るなど、演歌だけではなくジェンダーフリーな姿を披露してきました。

リハーサル時の取材でも「紅組のような白組のような演出になっている」と発言しましたが、その決意の裏にはトップアーティストが抱いていた苦悩も物語っていたのです。

これまで世間が描いてきた氷川きよし像は、演歌界の貴公子というキャッチフレーズで、さわやかな好青年が日本の伝統的な演歌の世界を表現するというものでした。

もちろんその中でも名実共に人気を博していた彼ですが、そのカテゴライズが苦しかったこともあると告白。そこから自分らしく、ありのままの姿で表現したいという思いが募っていったと語ります。

この紅白には「きーちゃんらしく、きよし君にはちょっとさよならして、ありのままの姿で紅白で輝きます。」という彼自身の並々ならぬ思いが込められていたのです。

本番では『限界突破×サバイバー』という、まさに己を表すような楽曲を熱唱。輝く龍に乗った姿、そして歌唱の最後に見せた観客への投げキッスは、まさに”紅でも白でもない"誰よりも美しいと視聴者からも絶賛の声が聞こえました。

氷川きよしの見せた新境地は音楽界だけではなく、日本社会全体が自分らしさを追求することを後押ししたのかもしれません。

紅組のトリを務めたMISIAが掲げたレインボーフラッグ

華やかなアーティストが揃った紅組のトリを飾ったのは、言わずと知れた実力派のディーバMISIAです。真っ赤なドレスに身を包み、しっとりとした楽曲『アイノカタチ』を熱唱する姿は優雅で、まさにトリにふさわしい佇まいでした。