日本企業・日本人への影響は?

既に、株価の大幅下落など世界経済にも影響が出ているが、今後はどんな影響が出てくるのか。

まず、この問題によって、中東にある日本権益・日本人が狙われるということはない。日本は米国だけでなく、イランとも歴史的に友好関係にあり、イランが日本権益を攻撃する理由はない(ただ、去年安倍首相がイランを訪問している最中、ホルムズ海峡付近を航行中の日本タンカーが攻撃された事件の背景が分からないままだが)。

しかし、中東各国に米国権益は多数あり、各国を拠点とする親イランの組織が米国権益を攻撃する可能性が高い。イエメンのフーシ派やレバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスなどは今回の事件を非難し、米国への報復を強く呼び掛けているが、そういった場合に日本人が巻き込まれるリスクは十分にある。

既にイラクでは米国と親イラン組織の応酬が激しくなっているが、たとえばサウジアラビアやUAE、バーレーンはイランと外交関係を断絶しており、それら各国にある米国権益が狙われる可能性もある。

そして、イスラエルにおいては、周辺各国の親イラン組織はミサイル攻撃などの軍事力を十分に備えている。既にイスラエル軍は厳戒態勢をとっているかも知れないが、今後は両者の攻防が激しくなる可能性もある。

よって、企業であれば駐在員や出張者に対して、中東各国の首都にある米国大使館、米軍施設には絶対に近づかないことを徹底させ、イスラエルへの出張を停止するなどの対策を施すべきだろう。

今後の行方は?

現在の緊張は今後も続く。世界情勢の行方にとって、今年最大の政治イベントは11月の米大統領選であるが、トランプ大統領が再選されるかどうかは、イラン情勢にも大きく影響するだろう。

トランプ大統領の頭の中は11月のことで一杯と考えていい。よって、今後のイラン情勢の行方は、イラン問題がトランプ氏にとって支持拡大の材料になるかどうかに掛かっているといっても過言ではない。

和田 大樹