オリンピックイヤーが明け、日本ではその準備が着々に進むなか、中東では激震が走った。

米国のトランプ大統領が、イラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のスレイマニ司令官を殺害したと発表し、米イラン関係はこれまでになく緊張が高まっている。石油の多くを中東に依存する日本でも、第3次世界大戦かなどとその行方を懸念する多くの声が聞こえる。

イランによる報復の選択肢は?

今後の動きはどうなるのだろうか。1月7日現在、イランは必ず報復すると宣言し、トランプ大統領もイランが攻撃すればやり返すとツイートしている。米国がイラン国内を空爆し、イランがそれに応戦するなど、両国の軍隊が直接衝突する(戦争)というシナリオの可能性は低いとされてきたが、司令官の殺害によってその可能性も高まったといえる。

しかし、米国とイランの軍事力には圧倒的な差があり、イランも真っ向から衝突しても勝てないことは十分に分かっている。よって、報復すると宣言しているイランが採るプランは、まずは今までのような非対称戦だ。非対称戦とは、文字どおり、ボールを受け取ってそのボールをそのまま返すのではなく、違う手法で相手に仕返すということだ。

すなわち、イランが報復として具体的に採る選択肢としては、①サイバー攻撃、②ホルムズ海峡の封鎖、③親イランのシーア派組織・民兵への支援強化(それによる攻撃)がなどが挙げられる。イラン経済も石油輸出に大きく依存していることから、②はなかなか難しいので、まずは①と③による報復となろう。

③は中東での影響力拡大を目指すイランが前からやっていることではあるが、イランは、イラクやシリア、レバノン、イエメンなどを拠点とするシーア派組織を軍事的・財政的に支援している。

既に、イラクの親イラン組織はバグダッドにある米国大使館などを攻撃している。今後はこれら組織が中東各地にある米国大使館や米軍基地を攻撃する可能性が高いが、イランがより突っ込んだ形で対応してくる場合もあろう。

また、イランはテルアビブなどイスラエル各地の都市への攻撃も示唆している。そうなると、レバノンやシリアにあるシーア派組織がイスラエル領内に向けてロケット砲やミサイルを撃ち込むといったケースもあり得るだろう。