この記事の読みどころ
- 平成28年度税制改正にある、三世代同居を促進するような特例の内容を詳しく見てみます。三世代同居をしなくても特例を受けることができる要件になっています。
- 三世代同居率が高い県、低い県はどこか確かめてみました。
- 三世代同居率の高い県では確かに育児をする女性が外で働く割合が高く、可処分所得も高いですが、世帯正味財産は必ずしも高いとは限りません。
三世代同居改修工事をすると税金が安くなる
政府が認識している世の中の課題やその解決の道筋を垣間見る方法の1つに、毎年の税制改正の内容を確認するということがあります。
平成28年度税制改正の中で、目に留まったのは、「住宅の三世代同居改修工事等に係る特例の創設」のところでした。
参考:「平成28年度税制改正パンフレット」(財務省)
この特例は、(1)三世代同居に対応した住宅リフォームを、(2)借入金を利用してリフォームを行った場合、または自己資金でリフォームを行った場合、に税額控除を受けられるというものです。
借入金を利用する場合は住宅借入金等の年末残高の1~2%、自己資金の場合は標準的な工事費用相当額の10%が、個人所得税から控除されます。今のところ、平成28年4月1日から平成31年6月30日までの期間限定の制度です。
三世代が同居しなくても控除を受けられる?
ここで言われている「三世代同居に対応した住宅リフォーム」とは、「工事費用50万円以上をかけて、キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれかを増設する工事」と定義されています。そして、この控除を受けるためには、改修後、いずれか2つ以上が複数となる必要があります。
たとえば、もともとトイレが1つ、玄関が2つある家の場合、リフォームでトイレを1つ増やせば、改修後は、トイレが2つ、玄関が2つになりますから、控除の対象となります。
この条件からすると、分譲マンションではまず無理で、戸建てのリフォームのみが対象になります。また、増築することを考えれば、ある程度土地に余裕がないとできません。そのため、大都市圏では特例を使うのは難しそうです。
さらに不思議なことに、三世代が同居していることは求められていません。極端に言えば、増築の結果、上のいずれか2つ以上が複数になっていれば、1人暮らしであっても認められるということです。
特例を使うために無駄なリフォームをする人もいないだろうという考えが根底にあるのかもしれませんが、家族や人の実態よりも、建物にばかり目が向いているという印象は拭えません。
なぜ三世代同居なのか?
「少子化社会対策大綱」や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」などの政策パッケージでは、子育て支援、人口減少対策、地域活性化などのテーマが取り上げられています。三世代同居は、その解決のためのキーワードの1つとして登場してきます。
また、子育て世代の30~40歳代の約20%が、三世代同居を理想の住まい方だと考えている調査もあり、そこから注目されたものと見受けられます。
三世代同居が多い県、少ない県
2010年の国勢調査のデータによると、三世代同居率は全国平均で7.1%となっています。
これを県別に見ると、トップは山形県で21.5%となります。山形県の5世帯に1世帯は三世代同居となります。その後に、福井県(17.5%)、秋田県(16.4%)、新潟県(16.4%)、富山県(16.1%)と続きます。
見事なまでに、東北地方の日本海側と北陸地方の県が上位を占めています。
逆に、最も低いのは東京都の2.3%です。東京都では、三世代同居は50世帯に1世帯しかないことになります。東京都の後には、鹿児島県(3.2%)、大阪府(3.6%)、神奈川県(3.7%)、北海道(3.9%)と続きます。
鹿児島県が2番目に低い理由はよく分からないのですが、大体は大都市圏を抱える県が下位に並んでいます。