たとえば、「欠員が出た時は優先的に正社員が埋めなければならない」「正社員には転勤や部署移動がある」といった誰でも判断できる事情があれば、それに応じて給与に差を設けることは合理的でしょう。
ただし、給与には上記のような基本給だけでなく、様々な手当てや賞与もあります。
一例として、あまりないかもしれませんが、通勤手当は正社員のみというケースは違法です。通勤手当は通勤に伴う実費補てんの意味合いが強いので、そこには正社員でも非正規社員でも違いはありません。正社員にのみ支給するというのは、まさに合理的な理由がありません。
また、同じ時間働いているのに、正社員にしか食事補助がないというのも認められません。このように、手当がいくつかあるような場合は、一つ一つの手当について差があれば、その理由付けが必要なのです。
さらに、賞与についても、客観的で明確な理由もなく正社員のみを対象にするということはNGということになります。
たとえば正社員にのみついている手当について、なぜ正社員のみなのか理由が明確でなければ、会社に聞くこともできます(今回の法改正では、待遇差がある場合は、会社に説明義務があると定められました)。また、納得できなければ、労基署に訴えやすくなる制度も導入されます。
アルバイトであれば、正社員の給与明細を見る機会はあまりないでしょうから、そもそもどのような手当がついているのかわからないかもしれません。
ただ、もし正社員の給与明細を見て、知らない手当がついていれば、内容を会社に聞いて納得できる説明が得られるかどうかということも、非正規社員の権利として認められるということです。
渋田 貴正