住宅ローンの貸出残高は約180兆円、国家予算の1.8倍規模

「人生最大の買い物」と言われている住宅(マイホーム)ですが、多くの人がローンを組んで購入します。もちろん、一括購入する人も一定割合存在しますが、何らかの形で借入をして購入する人が圧倒的に多いでしょう。住宅ローンは金額も多額で返済期間も長期に及ぶことが多いため、新規でも借り換えでも大きな決断を必要とされます。

ところで、国内における住宅ローンの貸出残高はどれくらいあるのでしょうか。

住宅金融支援機構の貸出し分を除いた、いわゆる純粋な金融機関による貸出残高は約180兆円と見られます(2019年3月末で約174兆8,000億円、四半期ベースで変動あり)。180兆円と言われてもピンとこないと思いますが、日本の国家予算が約100兆円ですから(2019年度は101兆円強)、その規模の大きさが分かるのではないでしょうか。

“事件扱い”となった住宅ローンの破綻率は3%前後、非常に高い比率

さて、突然ですが、こうした住宅ローンの破綻率はどれくらいだと思いますか?

結論から先に言うと、2%~4%です(NPO法人「住宅ローン問題支援ネット」による。以下同)。金額にすると3.6兆円~7.2兆円。少し幅が広いのは、当該業界から正式データが公表されていないこと、及び、競売の範囲が広いためと見られます。

それでも、この公表値に基づけば、破綻率はザックリ約3%、金額にすると約5~6兆円というところでしょうか。結構大きな金額です。

さらに、ここでいう「破綻」とは、単に返済が数カ月滞っているというレベルではなく、完全に“事件扱い”された案件が対象です。この“事件扱い”とは、返済不能に陥ったため、(住宅ローンの対象である)住宅が競売に掛けられたり、任意売却を迫られたりした案件を指します。

競売は裁判所から情報公開され、任意売却は信用機関のブラックリストに載ります。事実上、世間に“住宅ローンが返済できませんでした”と公表することになり、多くの場合は自己破産の申請を余儀なくされます。

表現が適切ではないかもしてませんが、完全な「黒」という状況でしょう。

破綻予備軍は約3倍という調査結果もある、約10兆円が焦げ付きの危機?

また、こうした“事件扱い”には至っていないものの、長期間の滞納や将来の返済困難に陥った事例など、いわゆる破綻予備軍は前述した破綻件数の3倍程度あると見られています。つまり、既に破綻済みの分を除いても、約10兆円弱がいつ焦げ付いても不思議ではないということです。

前述した表現を使えば、かなり黒に近い「灰色」ということでしょうか。

ちなみに、住宅に次ぐ高級耐久消費財である自動車の場合、前述した“事件扱い”と同じレベルの自動車ローン破綻比率、つまり、返済不能でクルマを強制差し押さえされるレベルは0.3~0.5%程度と見られます。金額やローン期間が異なるので一概に単純比較はできませんが、住宅ローンの破綻率の高さが理解できます。

厳格な事前審査を行っているはずの住宅ローン破綻が増えている背景