主役の中でもセリフの多い少ないという現実に、Kさんは心中複雑でした。会場となった体育館で知り合いのママ達から「主役、凄いね」「堂々としていたじゃない」と声をかけられても作り笑いを浮かべるのが精一杯。K子さんの娘さんが発したセリフの数は2つ程度と、主役に選ばれた6人の中で一番目立たないシーンを任されていたのです。

我が子が帰宅した時、どんな声をかけようかKさんは悩みました。学習発表会の練習が本格化してから劇の話をあまりしなくなったのも、あのシーンになったことが原因なのでは、と思いめぐらせました。主役を目指して頑張って勝ち取ったのにと、本人が落胆しているのを悟られたくなかったのではと考えたのです。

帰宅した娘さんは、開口一番に「セリフ少ないからガッカリした?」と言ったそうです。そして、1人で真ん中に立つのも緊張するし、最後の学習発表会だから多くの同級生と同じ舞台に立っている場面が良いと、自らあの場面を志願したと驚きの告白をしたのです。

「主役だから変にママとパパが期待するといけないから劇の話は避けていた」と笑い飛ばす我が子の明るい顔を見て、Kさんの心のモヤモヤは消え去りました。

主役の立ち位置が親世代とは変わってきている

YさんとKさんはそれぞれお子さんが主役の座を掴んだのに、親が思っていたような主役とはかけ離れた存在でした。

一部の限られた生徒が演じていた主役は、今では複数人が分担することになってきています。そのため、親世代が経験してきた主役=スター的存在という図式は崩壊し、5、6人の主役がいる場合は各人の持ち時間が5、6分になっているのです。このように、より多くの生徒が主役を演じ、準主役も複数人で分担しているのは、目立つ子が偏らないよう先生が我が配慮していることの結果ともいえます。

劇で目立つ目立たないは、当事者である子供達より大人である親の方が気にすることがほとんどです。親の前のめり姿勢や役への不満は、モンスターペアレンツと受け止められたりするなどのマイナス面もあります。熱くなりすぎず、子供の努力を素直に認めるようにしたいですね。

中山 まち子