4. 【退職金の残り】マンション購入後の手元資金と60歳代の資産
住居費の合計だけで比べると、見落としやすいのが手元に残る退職金です。相談の夫婦の場合、退職金約1800万円から物件価格と仲介手数料を払うと、残りは約760万円になります。
4.1 60歳代の金融資産残高は平均2336.5万円
総務省統計局の「令和6年全国家計構造調査」では、世帯主が60歳代の世帯の金融資産残高(2024年10月末)は平均2336.5万円でした。年齢階級別では、60歳代が最も多くなっています。
ただし、平均は金融資産の多い世帯に引き上げられやすい数字です。年齢を問わず総世帯で見ると、金融資産残高の中央値は600万円でした。金融資産を持たない世帯を除いても728万円です。
4.2 建物の資産額は年数とともに下がる
同じ調査では、住まいの資産を「宅地資産」と「住宅資産」に分けて推計しています。住宅資産は、延べ床面積や建築時期に応じた残価率などを使って計算するものです。
世帯主が60歳代の世帯では、宅地資産が平均2087.0万円だったのに対し、住宅資産は平均453.3万円でした。固定資産税でも、建物は建築後の年数に応じた減価を反映して評価されます。
退職金で買った住まいは、預金とは違い、年月とともに資産としての評価が変わっていくものだと押さえておきたいところです。
25年間の住居費は、試算では購入のほうが約474万円少なくなりました。一方で、物件の代金を払うと、手元に残る退職金は約760万円まで減ります。
検討している物件の管理費と修繕積立金の額、すでに積み立てられている額は、購入前の重要事項説明で書面で確かめられます。
ここからは、筆者の視点から、退職金で住まいを買う前に夫婦で話し合っておきたいことをまとめます。
5. 【筆者の視点】退職金で中古マンションを買う前に夫婦で確かめたい3つのこと
住まいを買うか借りるかは、25年間の合計額だけでは決めきれません。退職金を使う前に、次の3つを夫婦で話し合っておくと判断しやすくなります。
5.1 修繕積立金がこの先どう変わる計画か
試算で見たとおり、修繕積立金が上がると購入の有利さは小さくなります。同じ調査では、長期修繕計画を作っている管理組合は88.4%でした。
不動産会社を通じて、長期修繕計画と、修繕積立金を引き上げる予定があるかを確かめておくと安心です。
5.2 何歳までその家に住むつもりか
試算の最後の年、夫は87歳です。体調や介護の状況によっては、住み替えを考える時期が来るかもしれません。
そのときに売るのか、貸すのか、子どもに残すのかで、買う物件の選び方も変わります。夫婦の考えをそろえておくことが、後悔しない選択につながります。
5.3 手元にいくら残しておくか
購入後の手元資金は、日々の生活費の不足分や、医療・介護の費用にも使うお金です。住まいにいくら回し、いくら手元に残すかを、年金の見込額とあわせて考えておきましょう。
迷ったときは、物件のことは不動産会社に、税金のことは市区町村(東京23区は都税事務所)に、家計全体のことはファイナンシャルプランナーに相談する方法もあります。
6. まとめにかえて
退職金でマンションを現金で買えば、家賃はかからなくなります。ただし、管理費と修繕積立金、固定資産税は、住み続けるかぎり払い続けるお金です。
今回の試算では、25年間の住居費は購入のほうが少なくなりましたが、修繕積立金の引き上げや手元資金の減り方まで含めて考える必要があります。まずは検討している物件の数字を書面で確かめ、夫婦で納得できる形を選んでいきましょう。
参考資料
- 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果〔概要編〕」
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」
- 総務省「固定資産税の概要」
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」
- 総務省統計局「令和6年全国家計構造調査 所得に関する結果、家計資産・負債に関する結果及び年間収入・資産分布等に関する結果 結果の要約」
太田 彩子