10. 毎月100万円の医療費が12か月続くと、年間の自己負担は標準報酬月額44万円から50万円で53万円のまま:編集部試算
月額上限が上がる区分でも、治療が長く続く場合は、多数回該当と年間上限が働きます。標準報酬月額が44万円から50万円の人が、8月から翌年7月まで、毎月医療費100万円(3割負担)の治療を受け続けた場合を試算します。
現在の区分では、1か月目から3か月目は9万2940円ずつ、合計27万8820円です。4か月目からは多数回該当の4万4400円で、積み上がった自己負担は、9か月目に年間上限の53万円に達します。10か月目以降は、自己負担がありません。
令和9年8月からの区分では、1か月目から3か月目は11万6720円ずつ、合計35万160円です。4か月目からは多数回該当の4万4400円で、8か月目に年間上限の53万円に達します。年間の自己負担は、53万円で変わりません。
違いが出るのは、年間上限に達する月です。現在は9か月目、令和9年8月からは8か月目になります。短い治療なら月額上限が上がった分だけ負担が増え、長く続く治療なら、年間では同じ上限に収まる形です。
10.1 【毎月医療費100万円が12か月続くと年間の自己負担はいくら?標準報酬月額44万円から50万円の場合を試算(編集部試算)】
- 令和8年8月から(現在):1か月目から3か月目は9万2940円ずつ(合計27万8820円)、4か月目からは4万4400円で、9か月目に年間上限に達し、年間の自己負担は53万円です。
- 令和9年8月から(予定):1か月目から3か月目は11万6720円ずつ(合計35万160円)、4か月目からは4万4400円で、8か月目に年間上限に達し、年間の自己負担は53万円です。
年間上限は、厚生労働省のページによると、月ごとの自己負担額が積み上がっても、年間の上限額に達した後は、それ以上の医療費については、保険者から還付を受けられる仕組みです。協会けんぽのページには、年間上限額の高額療養費の申請は令和9年8月から開始する、と書かれています。申請書の掲載は、待つように案内されています。ほかの保険者の扱いは、確認した資料からは分かりませんでした。
また、標準報酬月額が15万円以下と確認できた人は、年間上限41万円が適用され、令和9年8月以降に償還払いになる、と資料の注に書かれています。該当する人は、保険者の案内を確認してください。
11. 【編集者の視点】
月ごとの上限が上がる場合、家計への影響は、治療がどのくらい続くかで違って見えます。医療費が高い月が数か月で終わる人は、月額上限の差がそのまま負担の差になります。
一方、医療費が高い月が長く続く人は、多数回該当と年間上限が働くため、年間の合計は、区分が変わっても同じになる場合があります。標準報酬月額44万円から50万円の試算では、上限に達する月が1か月早まるだけでした。
どちらの見方も、ご自身の治療の見込みを、主治医や病院の窓口、保険者に確かめたうえでないと、当てはめられません。この記事の試算は、仮定の数字として、区分の違いを見るために使ってください。
※本記事は、編集部が厚生労働省の公表する公式の最新一次資料を直接確認の上、執筆・検証しています。
12. 区分は年収ではなく標準報酬月額で決まり、令和9年1月には標準報酬月額の特例が始まる予定
13区分の表の年収換算は、あくまで目安です。区分は、健保なら標準報酬月額、国保なら旧ただし書き所得で決まります。年収が同じでも、加入している保険によって、当てはまる区分が違うことがあります。
厚生労働省のページには、加入している保険者の確認方法も載っています。「〇〇健康保険組合」「全国健康保険協会」「〇〇共済組合」と書かれている人は、その保険者に問い合わせます。市区町村名が書かれている人は、市区町村の国保の窓口に問い合わせます。
また、同ページの「その他のお知らせ」には、令和9年1月から、療養、育児、または介護と仕事を両立するために勤務時間の短縮などを行い、報酬が大幅に減少した人について、標準報酬月額の特例的な取扱いを始める予定、と書かれています。
この特例の対象になると、保険料や、高額療養費の自己負担限度額の算定の基礎となる標準報酬月額が、特例的に扱われます。つまり、高額療養費の区分に、特例が影響する可能性があります。対象の条件や計算の方法は、本記事で確認した資料では分かりませんでした。通知を、勤務先や保険者に確認してください。
今回の見直しの全体像は、【高額療養費】年間上限は令和8年8月から。所得区分の細分化は令和9年8月からでも整理されています。見直しに関する質問は、厚生労働省のコールセンターでも受け付けている、と同ページに書かれています。
13. よくある質問
13.1 Q. 令和9年8月から、70歳未満の区分はいくつになりますか?
5段階から13段階になる予定です。標準報酬月額が127万円以上から15万円以下までの12区分と、住民税非課税の区分の、あわせて13区分です(厚生労働省)。
13.2 Q. 区分は、年収で決まりますか?
年収ではなく、健保なら標準報酬月額、国保なら旧ただし書き所得で決まります。資料の年収換算は、目安として示されたものです(厚生労働省)。
13.3 Q. 令和9年8月から、月額上限が上がる区分はありますか?
標準報酬月額が127万円以上、103万円から121万円、71万円から79万円、62万円から68万円、44万円から50万円、36万円から41万円、20万円から26万円、16万円から19万円の8区分で、現在より上がる予定です(厚生労働省の資料をもとにした編集部の整理)。
13.4 Q. 変わらない区分はありますか?
標準報酬月額が83万円から98万円、53万円から59万円、28万円から34万円、15万円以下の4区分と、住民税非課税の区分は、月額上限が現在と同じです(厚生労働省の資料をもとにした編集部の整理)。
13.5 Q. 多数回該当の金額は、変わりますか?
据え置きが中心ですが、標準報酬月額が15万円以下(国保は旧ただし書き所得が86万円以下)の区分は、4万4400円から3万4500円に下がる予定です(厚生労働省)。
13.6 Q. 年間とは、いつからいつまでですか?
8月から翌年7月までを指します(厚生労働省)。
13.7 Q. 自分の区分は、どこで確認できますか?
加入している保険者に確認します。「〇〇健康保険組合」「全国健康保険協会」などの人はその保険者、市区町村名の人は市区町村の国保の窓口です(厚生労働省)。
13.8 Q. 令和9年1月からの標準報酬月額の特例とは何ですか?
療養、育児、または介護と仕事を両立するために勤務時間の短縮などを行い、報酬が大幅に減少した人の標準報酬月額を、特例的に扱う取扱いを始める予定です。保険料や高額療養費の限度額の算定に関わります。対象の条件は、保険者に確認してください(厚生労働省)。
参考資料
齊藤 慧