5. 高額療養費の13区分で自己負担はいくら変わる?4つの場合を厚生労働省の資料で確認
読者の方が気にしそうな4つの「もし」を、厚生労働省の資料と編集部の試算で確認します。医療費(10割)100万円、窓口負担3割、医療機関は1か所、直近12か月に高額療養費の該当なし、という仮定です。いずれも、ご自身の区分と金額を予測するものではありません。
- もし、標準報酬月額が44万円から50万円で、医療費100万円の月があったら:自己負担は、現在の9万2940円から、令和9年8月から11万6720円に増えます。差は2万3780円です
- もし、標準報酬月額が53万円から59万円で、同じ月があったら:現在も令和9年8月からも、18万3130円で変わりません
- もし、標準報酬月額44万円から50万円で、毎月100万円の医療費が12か月続いたら:年間の自己負担は、現在も令和9年8月からも53万円です。年間上限に達する月が、9か月目から8か月目に1か月早まります
- もし、標準報酬月額が15万円以下で、多数回該当になったら:多数回該当の金額が、4万4400円から3万4500円に下がります。差は9900円です
ここからは、この答えの前提になる制度を順に確認します。令和8年8月からの上限との比較、医療費100万円の月の自己負担、多数回該当、年間の自己負担の順です。
6. 令和9年8月から、70歳未満の区分は5段階から13段階に細分化される予定
厚生労働省の「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(更新日2026年7月31日)によると、今回の見直しは、令和8年8月と令和9年8月の2段階で行われます。令和8年8月からは、一人当たり医療費の伸びに応じて月額の負担上限額を見直し、新たに年単位の「年間上限」を設けています。
令和9年8月からは、応能負担という観点に基づき、所得区分をよりきめ細かいものとするため、現在の限度額から著しく増加することがないよう配慮しつつ、所得区分の細分化を行うとされています。この記事で扱うのは、この令和9年8月の細分化です。
同じページには、低所得の方への配慮として、「年収200万円未満の課税世帯」の多数回該当の金額を引き下げる、と書かれています。引下げは、令和9年8月からです。引下げの幅は、ページには「▲同25%」とあります。
資料の表の金額は、これとは少し違う数字になっています。この点は、後ほど「多数回該当」の章で確認します。なお、70歳以上の区分は、70歳未満とは分け方が違います。この記事では、70歳未満を中心に扱います。
区分がどう決まるかの基本は、【高額療養費】70歳未満の所得区分は令和9年8月から5段階が13段階に。年間の上限額は今年8月から新設されているでも整理されています。本記事は、13区分の金額に絞って確認します。
7. 令和8年8月からの上限と比べると、月額上限が上がるのは8区分、変わらないのは5区分
厚生労働省の資料の、令和8年8月から令和9年7月までの表は、70歳未満が5区分です。標準報酬月額が83万円以上の区分は、月額上限が27万300円+(医療費−90万1000円)×1%です。53万円から79万円の区分は17万9100円+(医療費−59万7000円)×1%、28万円から50万円の区分は8万5800円+(医療費−28万6000円)×1%です。
26万円以下の区分は6万1500円、住民税非課税の区分は3万6900円です。
令和9年8月からは、この5区分が13区分に分かれます。月額上限を比べると、上がる区分と、変わらない区分があります。標準報酬月額が83万円から98万円、53万円から59万円、28万円から34万円、15万円以下の4区分と、住民税非課税の区分は、月額上限が現在と同じです。
上がるのは、127万円以上、103万円から121万円、71万円から79万円、62万円から68万円、44万円から50万円、36万円から41万円、20万円から26万円、16万円から19万円の8区分です。同じ5区分のなかで、上の区分ほど細かく分かれ、より高い上限が設けられる形です。
月額上限の式は、基準の額だけでなく、「医療費−一定額」の一定額も区分で変わります。たとえば、現在の標準報酬月額28万円から50万円の区分は、医療費から28万6000円を引きます。令和9年8月からの44万円から50万円の区分は、36万8000円を引きます。
8. 医療費100万円の月の自己負担は、標準報酬月額44万円から50万円で9万2940円から11万6720円に:編集部試算
上限額の違いを実感しやすいように、医療費(10割)が100万円かかった月の自己負担を試算します。窓口の負担割合は3割です。医療機関は1か所だけで、ほかの医療費や、直近12か月の高額療養費の該当はない、という仮定です。
標準報酬月額が44万円から50万円の人は、現在の区分では、8万5800円+(100万円−28万6000円)×1%で、9万2940円です。令和9年8月からは、11万400円+(100万円−36万8000円)×1%で、11万6720円です。差は、2万3780円です。
この9万2940円は、厚生労働省のページが挙げる例とも合います。同ページは、令和8年8月からの制度で、70歳未満・年収約370万円から約510万円の方が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円までと説明しています。
標準報酬月額が36万円から41万円の人は、令和9年8月から10万4830円で、現在より1万1890円増えます。71万円から79万円の人は、21万2420円で、2万9290円増えます。最も増えるのは、この区分です。
127万円以上と103万円から121万円の区分は、月額上限が30万円を超えるため、医療費100万円の月は窓口3割の30万円がそのまま自己負担になり、高額療養費は出ません。現在の区分では27万1290円で済んでいたので、2万8710円の増加です。
8.1 【医療費100万円の月の自己負担はいくら増える?令和8年8月からと令和9年8月からを比較(編集部試算)】
- 127万円以上:27万1290円から30万円(上限に届かず窓口3割)へ、2万8710円増えます。
- 103万円から121万円:27万1290円から30万円(上限に届かず窓口3割)へ、2万8710円増えます。
- 83万円から98万円:27万1290円のままで、変わりません。
- 71万円から79万円:18万3130円から21万2420円へ、2万9290円増えます。
- 62万円から68万円:18万3130円から19万7920円へ、1万4790円増えます。
- 53万円から59万円:18万3130円のままで、変わりません。
- 44万円から50万円:9万2940円から11万6720円へ、2万3780円増えます。
- 36万円から41万円:9万2940円から10万4830円へ、1万1890円増えます。
- 28万円から34万円:9万2940円のままで、変わりません。
- 20万円から26万円:6万1500円から6万9600円へ、8100円増えます。
- 16万円から19万円:6万1500円から6万5400円へ、3900円増えます。
- 15万円以下:6万1500円のままで、変わりません。
- 住民税非課税:3万6900円のままで、変わりません。
この試算は、医療費が100万円の月だけを取り出したものです。医療費が少ない月は、上限に届かないため、窓口3割の負担のままで、区分による違いは出ません。上限の違いが表に出るのは、医療費が高い月だけです。
9. 多数回該当は据え置きが中心で、標準報酬月額15万円以下は4万4400円から3万4500円に下がる
多数回該当の金額は、厚生労働省の資料によると、今回の見直しで据え置かれます。標準報酬月額が44万円から50万円、36万円から41万円、28万円から34万円の3区分は、現在も令和9年8月からも、4万4400円です。
令和9年8月の表では、20万円から26万円と16万円から19万円の区分も、多数回該当は4万4400円です。現在は、26万円以下がまとめて4万4400円でした。細分化されても、この2区分の多数回該当の金額は変わりません。
下がるのは、標準報酬月額が15万円以下(国保は旧ただし書き所得が86万円以下)の区分です。多数回該当は、現在の4万4400円から、令和9年8月に3万4500円になります。差は、9900円です。
厚生労働省のページには、この引下げが「▲同25%」と書かれています。一方、資料の表の4万4400円から3万4500円は、9900円の減少で、割合にすると約22%です。25%という数字と、表の金額が合わない理由は、確認した資料からは分かりませんでした。金額は、表の数字を使います。
協会けんぽのページにも、令和9年8月から、標準報酬月額が15万円以下の方の多数回該当の金額を引き下げる、と書かれています。こちらは対象を標準報酬月額で示していて、割合は書かれていません。
なお、多数回該当は、直近12か月の間に高額療養費に該当した月が3か月以上ある場合に、4か月目以降に適用されます。厚生労働省のページでは、見直しにあたり、長期に継続して治療を受けている人の負担を増やさないために、多数回該当の金額を据え置く、としています。