4. 契約してしまったら?クーリング・オフで知っておきたい注意点は3つ
点検の流れで契約してしまっても、手続きによっては契約を解除できる場合があります。押さえておきたい注意点は次の3つです。
4.1 注意点1:自分で来訪を承諾した場合も、訪問販売にあたることがある
見落とされやすいのが、「自分で来訪を承諾したのだから対象外では」という思い込みでしょう。国民生活センターは、販売業者等から電話をかけ、事前にアポイントメントを取って訪問する場合も、特定商取引法の訪問販売に該当すると考えられるとの見解です。
訪問販売に該当すれば、契約書面を受け取った日から8日以内はクーリング・オフができます。埼玉県は2026年1月29日、電話で分電盤の無料点検を持ちかけ、交換工事の勧誘目的を明らかにしなかった事業者に対し、同法に基づく行政処分を行ったと発表しました。
4.2 注意点2:通知は書面かメールで、送った証拠を残す
クーリング・オフの通知は、書面だけでなく、メールなどの電磁的方法でも可能です。福岡市の案内では、ハガキなら両面のコピーを取り、特定記録郵便や簡易書留など出した日付が分かる方法で送るよう勧めています。
メールやウェブサイトのフォームで送るときは、送信画面のスクリーンショットを保存しておくと安心です。契約書面を受け取っていない、内容に不審な点があるといった場合も、日数だけで判断せず相談しましょう。
4.3 注意点3:8日を過ぎても取り消せる場合がある
クーリング・オフの期間を過ぎても、勧誘方法に問題がある場合などは解約できることがあります。
国民生活センターによると、契約の大切な部分について事実と違うことを告げられ、誤認して契約した場合は、誤認に気づいた時から1年間、または契約締結時から5年間は取消しが可能です。「法律で交換が義務付けられている」といった説明を信じて契約したケースは、期間を過ぎていても一度相談してみる価値があります。
困ったときは、消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話すると、住んでいる地域の消費生活センター等を案内してもらえます。
5. 契約額の平均は約18万円 家族が早めに気づくには?
5.1 契約購入金額は「15万円以上20万円未満」が最多
国民生活センターの同資料では、2025年度に受け付けた分電盤の点検商法の相談のうち、金額が判明した3250件の契約購入金額を分析しています。最も多いのは15万円以上20万円未満で、平均は約18万円でした。
- 10万円未満:319件(9.8%)
- 10万円以上15万円未満:757件(23.3%)
- 15万円以上20万円未満:1515件(46.6%)
- 20万円以上:659件(20.3%)
15万円以上20万円未満の1515件と、20万円以上の659件を合わせた2174件で、全体の約3分の2(66.9%)を占める計算です。同資料の相談事例には、代金約20万円を現金で支払ったものの、見積書や契約書面を受け取っていないという90歳代男性のケースも紹介されています。
5.2 家族やヘルパーからも相談できる
同資料は、不審な人の出入りや困った様子がないかなど、身近な人が日頃から高齢者の変化に気づくことが重要だとしています。消費生活センター等への相談は、本人だけでなく家族やホームヘルパー、地域包括支援センターの職員などからでも可能です。
杉並区立消費者センターの啓発紙(2026年1月、No.254臨時号)は、ドアを開けずインターホン越しに断る方法を紹介しました。見慣れない契約書や工事の跡、急な出費の話に気づいたら、早めに188へつなぐことが被害の拡大を防ぐ一歩になります。
6. まとめにかえて|点検は「こちらから頼むもの」
分電盤の点検商法の相談は2025年度に6545件と、1年で約5倍に増えました。電気の法定点検は事前に書面で知らされ、ガス給湯器には法定点検そのものがありません。
電話や訪問で点検を持ちかけられたら、その場で約束せず、契約中の電力会社やガス会社に自分から確認しましょう。もし契約してしまっても、訪問販売にあたれば契約書面を受け取ってから8日以内のクーリング・オフが使えます。8日を過ぎていても、まずは188へ相談することが大切です。
点検商法の厄介なところは、「親切な無料点検」の顔をして近づいてくることです。だからこそ、断ることに後ろめたさを感じる必要はありません。本物の法定点検なら事前に書面が届き、調査員は身分証を携帯しています。迷ったら一度断り、契約中の電力会社やガス会社に確かめてからでも遅くはないでしょう。
離れて暮らす親御さんがいる方は、次に電話をするとき、「最近、点検の電話は来ていない?」と一言たずねてみてはいかがでしょうか。あわせて、電話機のそばに契約中の電力会社とガス会社の連絡先、そして188の番号を書いたメモを貼っておくと、迷ったときに確かめる先がすぐに分かります。
もし契約してしまった後でも、8日以内のクーリング・オフや、期間を過ぎた後の取消しといった道が残されているかもしれません。「恥ずかしいから」と一人で抱え込まず、家族や消費生活センターに話してみてください。それが、暮らしとお金を守るいちばんの近道になるはずです。
参考資料
- 国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください-相談が各地に広がり増加しています-」(2026年9月16日公表)
- 国民生活センター「分電盤の点検商法にご注意ください-相談が各地に広がり増加しています-」報告書本文(PDF、2026年9月16日)
- 国民生活センター「給湯器の点検にご注意ください-70歳以上の高齢者を中心にトラブル急増!-」(2024年2月21日公表)
- 国民生活センター「見守り新鮮情報」第478号「不安をあおって契約させる 給湯器の点検商法に注意」(2024年3月12日公表)
- 経済産業省「電気設備の点検等を装った訪問者に御注意ください」(2025年1月15日公表)
- 経済産業省「ガス機器等の点検等を装った訪問者に対する注意喚起について(依頼)」(2024年12月5日)
- 経済産業省「長期使用製品安全点検制度の見直しについて」(2021年3月)
- 埼玉県「分電盤交換工事等を行う事業者に対する行政処分について」(2026年1月29日発表)
- 世田谷区「給湯器の「点検商法」にご注意」
- 杉並区立消費者センター「杉並区内でも多発!「ガスの点検します。」突然の電話・訪問業者に注意」(No.254臨時号、2026年1月)
- 福岡市「クーリング・オフ」(消費生活センター)
池上 翠
