芸能人が若くして乳がんで亡くなるというニュースを耳にすると、わが身に置き換えて、乳がんについて調べたり、セルフチェックをしてみたりと危機感を抱く女性も多いのではないでしょうか。しかし大抵の場合、その危機感や恐怖は時間の経過とともに薄れ、元の生活に戻ってしまうものです。

つい先日、筆者の友人から久しぶりに連絡がありました。彼女はここ数年不妊治療に励んでいたので、てっきりよい知らせだと思いきや、実は乳がんを発症し、左胸を全摘したことを告白されたのです。彼女が、筆者に必死で伝えたことをここで代弁したいと思います。

晴天の霹靂!不妊治療中に乳がんが発覚

筆者には、A子という高校の部活仲間がいます。高校卒業後はお互い地元を離れたため直接会う機会は減ったものの、A子はプライベートな相談も気兼ねなくできる大切な友人のひとりです。

そんなA子は、5年前にめでたく結婚。結婚当初から子どもを望んでいたため、子作りに励んでいると聞いていました。しかし、なかなか子宝に恵まれないことやA子の年齢が30代に突入したことをきっかけに本格的な不妊治療を開始したと聞かされたのが、今から3年ほど前のことです。

そして、つい先日A子から久しぶりに電話がかかってきました。スマホのディスプレイにA子の名前を見た瞬間、「やったぁ!おめでただ!!」と思ったのも束の間、A子らしくない真面目なトーンの声で、

「私、乳がんになっちゃったんだ…。」と。

詳しく聞くと、A子がはじめて胸に違和感を抱いたのは2年前のこと。当時、胸に小さなしこりのようなものがあることに気が付いたにもかかわらず、「不妊治療で投与したホルモン剤の影響で胸が張っているのかな?」、「仕事が忙しい中、不妊治療の通院だけで精一杯!」との考えにより、そのまま1年が経過。そして乳腺外科を受診したときには、すでにステージ2の乳がんを患っており、左乳房全摘手術や抗がん剤治療、放射線治療などを行ったという状況でした。

乳がんで胸を失うことよりも金銭面の打撃の方が苦しい

A子の話を聞き、筆者は乳房全摘手術で大切な胸を失ったことを一番に心配したのですが、夫の励ましもあり、胸についてのショックはさほど大きくないとA子は言っていました。それよりも悲しく、辛いことは、生まれてくるであろう子どもの将来のためにと夫婦で一生懸命貯めてきたお金を、自身の治療のために使わなくてはいけないということだというのでした。

もちろん乳がんの治療自体にも医療費がかかりますが、A子のように将来子どもを希望する女性が乳がんなどの病気を患ったケース特有の出費があります。それは、乳がんの治療をはじめる前に卵子を育て、採卵し、受精卵などを凍結保存するための費用です。ご存知の通り、卵子や卵巣は抗がん剤や放射線によるダメージを受けやすいので、それらのダメージから卵子などを守るために体外に避難させ、新しい命に希望をつなげるのです。

しかし、妊よう性(妊娠する力)温存のための処置に保険は適応されず、自費診療となります。つまり、通常の不妊治療による体外受精と同等の費用がかかってしまうのです。2年間続けてきた不妊治療だけでも家計の負担になっていたことに加え、乳がん発覚以降は想像以上に大きなお金が次々と流れ出す事態に…相当なショックだったに違いありません。「将来、生まれてくる子どものために貯めていたお金が…」という彼女の言葉に胸をえぐられました。

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