こうした特性のために生きづらさを感じる場面も多いHSP。しかしHSPは生まれつきのものですし、そもそも病気ではありませんから、治すことはできません。では、HSPであるために生きづらく感じている人はどうすればいいでしょうか。

HSPであることがやめられないのなら、「HSPである」ということと上手につき合うということが必要になりましょう。そのためにできるいくつかのことがあります。自分はHSPだ、あるいはそうかもという人も、周囲の誰かがHSPだという人も、対処の方法を知っておきましょう。

1. 刺激の量を減らす

音に敏感な人はテレビやラジオをつけっ放したりしないよう気をつけて、外出する場合もBGMが常に流れている場所には長居しないようにしましょう。特に敏感な人はイヤーマフやノイズキャンセリング機能があるイヤホンなどを使って静かな環境を作ります。

まぶしいのが苦手な人は窓や戸口にカーテンを引いておいたり、照明の輝度を調節しましょう。スマートフォンやパソコンの画面もあまり見ないようにして、目からの刺激も情報からの刺激も少なくするのがいいでしょう。本稿未掲載の部分ですが、先の漫画ではちずるも「自分の身体に入ってくる情報をできるだけ減らす」という対処をしています。

2. 刺激を予測がつくものにする

同じ刺激でも、突然起こるものと予測できるものとでは、突然起こるものの方がびっくりする度合いが大きいものです。HSPは小さなことにもびっくりしやすいですから、できるだけ突然の刺激に遭遇しなくて済むようにしましょう。

具体的には、毎日の行動に時間や順番を設定して、ルーティンにしてしまいます。次に何をやるかがわかっていれば、そのときに起きることも予測がつきやすいです。毎日同じ時間に同じことを同じ順番でやるようにして、変化を少なくします。

3. 限界を越えない

これ以上刺激を受けては駄目、という限界点が、どの人にもあるでしょう。その限界点を迎える前に受ける刺激をとどめるようにするのです。疲れてきたとか何だかイライラする、ものごとの判断がつきにくくなってきたなど、「そろそろ限界かも」という兆しが現れたら、そこでそれ以上の刺激を受けないよう休みます。

人がいないところで何もせずにボーッと1日を過ごしたり、ときには物事から逃げることも必要です。「人と会わない」ことや「何もしない」こと、「逃げる」ことは悪いことではありません。自分が心地よく、楽にいられる環境をつくり、可能な限りそこで過ごすのがいいでしょう。

まとめ

HSPにとって、世の中は強すぎる刺激でいっぱいです。たくさんの強い刺激にさらされて、いつも疲れています。先に引用した漫画でちずるが「1人が一番楽だ」と思うのも無理はありません。

大勢の中で働くのが苦しいなら、1人でできる仕事をするのもひとつの選択です。ちずるも会社を退職し、ハンドクラフトで作った品を販売して生活するようになっています。そのおしまいの部分を次に引用します。


HSPの特性を活かして自宅で1人、ハンドクラフトをする生活を始め、作品にうれしい感想をもらったちずる。自分を肯定できるようになりました。HSPである自分をそのまま受け容れ、肯定することが、生きづらさを克服する大きな一歩となります。

繰り返しますが、HSPは病気ではありません。しかし、生きづらさが重なってしんどい状態が続くと病気につながることもあります。メンタルがつらい場合は精神科へ、体調が悪い場合は具合の悪い部位に合った診療科で、病気になる前に診てもらいましょう。

具合が悪いと感じる前に、「もしかしたら調子悪い?」というくらいで早めの受診が肝心です。HSPもHSPでない人も、健康でしんどくなく生きていけますように。

【参考】
【漫画】HSP(敏感すぎる人)になるとどんな生活になるのか?」【マンガ動画】(フェルミ研究所)
過敏で傷つきやすい人たち HSPの真実と克服への道」(岡田尊司/幻冬舎新書)
HSP!自分のトリセツ~共感しすぎて日が暮れて~」(高野優/1万年堂出版)

衛澤 創