4. 新NISAの損失は課税口座の利益と相殺できず、売却で空いた枠は翌年から使える
運用損益がプラスの顧客が多いという統計は、損失が出たときの扱いまで有利になることを意味しません。新NISAで投資信託を持つときは、マイナスになった場合のしくみも押さえておきます。
4.1 新NISAで出た損失は、損益通算や繰越控除ができない
NISA口座で投資信託を売って損失が出ても、その損失を特定口座や一般口座など課税口座で出た利益と相殺する損益通算はできません。翌年以降に損失を繰り越す繰越控除も使えません。
利益が非課税になる代わりに、損失も税金の計算上はないものとして扱われます。
4.2 売却して空いた非課税保有限度額を使えるのは翌年以降
新NISAでは、保有している商品を売ると、その商品を買ったときの金額の分だけ非課税保有限度額が空きます。ただし、空いた分をもう一度使えるのは、売った年の翌年以降です。
年間投資枠は売っても戻らないため、同じ年に売って買い直すと、その年の年間投資枠を使うことになります。
5. 共通KPIの割合は金融機関ごとの単純平均で、相場の動きも映る
投資信託の共通KPIの85.5%を自分の状況と重ねる前に、集計のしかたを確かめておきます。
5.1 業態の数字は、顧客の数で重みづけしていない単純平均
金融庁の集計は、各金融事業者の割合を単純に平均したものです。顧客の多い金融機関も少ない金融機関も同じ1者として数えるため、「投資信託を持つ人の85.5%がプラス」という意味ではありません。
5.2 取扱開始時期や顧客の数で、金融機関ごとの数字は変わりやすい
金融庁は、運用損益別顧客比率は各金融事業者の投資信託の取扱開始時期や保有顧客数、顧客が持つ銘柄などによって異なりうると注記しています。取扱開始から間もない場合や保有顧客数がきわめて少ない場合は、割合が大きく変動することがあるとしています。
5.3 基準日の評価で計算していて、その後の値動きは含まない
2026年3月末の割合は、2026年3月末時点の評価金額をもとに計算されています。その後に相場が動けば、個々の顧客の実際の損益も変わってきます。
6. 自分のNISA口座の運用損益を、共通KPIと同じ考え方で確かめる
統計の割合とは別に、自分の口座の損益は手元の書面や取引画面で確かめます。
6.1 評価額に受け取った分配金と売った金額を足して、買った金額と比べる
共通KPIのリターンは、評価金額に累計の分配金と売却した金額を足し、手数料込みの累計の買付金額を差し引いて計算しています。自分の口座でも、いまの評価額だけでなく、これまでに受け取った分配金と売った金額を合わせて買付金額と比べると、同じ考え方で損益を確かめられます。
6.2 取引残高報告書で、持っている投資信託と評価額を書き留める
金融機関から届く取引残高報告書には、基準日時点で持っている投資信託の銘柄や数量、評価額が記載されています。毎年同じ時期の評価額を書き留めておくと、損益の推移を自分で追えます。
6.3 口座を開いている金融機関の共通KPIを、業態の平均と並べる
金融庁は、2026年3月末基準の投資信託の共通KPIを報告した金融事業者のデータを、データベースとして掲載しています。口座を開いている金融機関の割合を、業態ごとの平均と並べて比較することもできます。
7. まとめ
金融庁の投資信託の共通KPIでは、運用損益がプラスの顧客の割合が、2026年3月末に金融事業者244者の単純平均で85.5%でした。2025年3月末の71.5%から上がり、協同組織金融機関等は20.4ポイント上昇しています。
一方で、割合は金融機関ごとの単純平均で、基準日時点の評価にもとづく数字です。新NISAで損失が出たときは課税口座の利益と相殺できないことも踏まえ、自分の口座の損益は取引残高報告書などで確かめておきましょう。
※本記事は統計と制度を解説するもので、特定の金融商品の購入・売却を勧めるものではありません。投資には元本割れのリスクがあり、最終的な投資判断はご自身で行ってください。