3. 見積もりで確認したい注意点が3つあります

前出のつむぎ株式会社の調査では、葬儀社への信用につながる情報・対応として、59.7%が「料金の内訳や、追加費用が発生する条件を隠さず説明してくれる」を選びました。一方で、15.0%は「情報は得られているが信用できない」と答えています。

情報を集めるだけでなく、中身を確かめることが欠かせません。国民生活センターのアドバイスや相談事例をもとに、見積もりの段階で確認したい点を3つ挙げます。

3.1 1.「家族葬」「一日葬」の範囲は葬儀社ごとに違う

国民生活センターによると、「家族葬」「一日葬」は葬儀社によって取り扱う範囲が異なることがあり、消費者のイメージとずれる点がトラブルの要因の一つと考えられる事例が見られます。

プラン名ではなく、参列者の人数、通夜の有無などの実施日数、式場を使うかどうかを具体的に伝え、その条件での金額を出してもらいましょう。

3.2 2.見積書は明細つきで受け取る

先ほどのネット表示の事例のように、見積書にプラン名と「一式」としか書かれていないと、何が含まれ、何が別料金なのかが分かりません。

国民生活センターは、契約前に必ず見積書を受け取り、契約に含まれる項目、含まれない項目は別料金なのか、追加サービスの内容と料金を確認するよう勧めています。打ち合わせは喪主1人で行わず、親族や第三者など複数人で臨むことも、助言の一つです。

3.3 3.「遺体の搬送」と「葬儀の契約」は分けて確認する

見落としやすいのが、搬送の段階です。先ほどの「50万円のプラン」の事例では、搬送後の打ち合わせで高額なプランを示され、断るなら搬送費用として20万円を請求すると言われていました。ところが広告には、打ち合わせのうえ依頼しない場合は搬送費用を受け取らない旨が書かれていたといいます。

病院や施設から急いで搬送を頼むと、そのまま葬儀もその会社に任せるしかないと感じがちです。搬送を依頼する時点で、搬送だけの料金や、葬儀を依頼しなかった場合の扱いを確認しておきましょう。

契約の内容に不安を感じたときや、トラブルになったときは、消費者ホットライン「188(いやや!)」で最寄りの消費生活センター等を案内してもらえます。

4. 葬儀費用は誰の財布から?高齢世帯の貯蓄と公的給付

葬儀費用を、故人の預貯金から出すことを考える家庭もあるでしょう。総務省統計局が2026年5月19日に公表した「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)」によると、世帯主が65歳以上の無職世帯の貯蓄現在高は平均2494万円でした。前年より66万円少なく、6年ぶりの減少です。

内訳をみると、定期性預貯金は前年から81万円(9.4%)減りました。また、世帯主が65歳以上の世帯のうち、貯蓄が300万円未満の世帯は14.9%を占めます。平均値だけでは見えない差があることがわかるでしょう。

毎月の家計にも余裕は大きくありません。同局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、実収入25万4395円に対し、消費支出と税・社会保険料などを合わせた支出は29万6829円で、毎月4万2434円の不足となっています。

この平均は1か月あたりの家計で、介護や葬儀のように、世帯によって発生の有無や金額が大きく異なる出費は十分に反映されていません。

4.1 葬儀のあとに請求できる公的給付は?

故人が加入していた公的医療保険から、葬儀に関する給付を受け取れる場合があります。いずれも自分から申請する必要があり、期限は2年です。

  • 健康保険(協会けんぽなど)の被保険者が亡くなった場合:生計を維持されていた人に埋葬料5万円。申請期限は死亡した日の翌日から2年以内
  • 国民健康保険・後期高齢者医療制度の加入者が亡くなった場合:葬儀を行った人に葬祭費。金額は自治体によって異なる
  • 例:東京都目黒区の後期高齢者医療制度は7万円(東京都後期高齢者医療広域連合から5万円、目黒区から2万円)。申請期間は葬祭日の翌日から2年以内

たとえば目黒区で後期高齢者医療制度に加入していた親を見送った場合、葬祭費は7万円です。措置命令の事例で生じた差額20万3500円の、約3分の1にとどまります。

5. まとめにかえて|「一式」の中身を尋ねることが最初の備え

葬儀サービスの相談は年900件前後で推移し、その半数以上を料金に関する相談が占めています。相談事例を見ると、費用が後から増えた背景には、プランの前提の違い、細かな項目の別料金、人数や内容で動く費目がありました。

見積書は明細つきで受け取り、含まれない項目や追加費用の条件を確かめておきましょう。搬送を急いで頼む場面でも、搬送の料金と葬儀の契約は分けて確認することが大切です。

国民生活センターは、前もって情報を集め、葬儀社へ事前相談しておくことや、複数の葬儀社を比較することを勧めています。埋葬料や葬祭費といった公的給付も、申請しなければ受け取れません。慌ただしい時期だからこそ、事前の確認が家計と気持ちの両方を守ります。

6. 【筆者コメント】

熊谷 良子

葬儀の話は「縁起でもない」と後回しにされがちです。けれど、葬儀社に事前相談をして見積もりをもらっておくことは、故人を軽んじることではありません。いざというとき、家族が金額の確認や交渉に追われず、お別れの時間に気持ちを向けるための準備だと私は考えています。

見積もりを2社分並べてみると、同じ「一式」でも中に含まれるものが違うことに気づくはずです。比べる相手がいると、説明の分かりやすさや質問への答え方など、金額以外の違いも見えてきます。どの項目が別料金になりやすいのか、人数が増えたら何が変わるのか。そうした点を元気なうちに聞いておけば、いざというときの判断は格段に楽になるでしょう。

今回の調査でも、多くの人が「判断材料が足りない」と感じていました。材料は、待っていても届きません。まずは近くの葬儀社の料金表を一つ取り寄せるところから、始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料