「見積もりより高くなった」「プランに入っていると思っていた」。葬儀費用をめぐるこうした行き違いは、決して珍しい話ではありません。

2026年9月18日、消費者庁は、テレビCMで家族葬を「10.45万円~」と表示しながら、実際にはわずかな場合を除き30万8000円以上の費用が必要だったとして、葬儀業者に景品表示法に基づく措置命令を出しました。

人事コンサルティング会社のつむぎ株式会社が2026年10月8日に公表した「葬祭業社の印象に関するアンケート」でも、安心して任せられる葬儀社かを判断する情報を十分に得られていない人が63.7%にのぼりました。

本記事では、国民生活センターに寄せられた相談事例から「見積もりのどこが後から増えたのか」を整理し、公的な給付や高齢世帯の貯蓄データとあわせて確認します。

1. 葬儀の料金トラブル、相談は年900件前後で推移

葬儀サービスの相談件数と「高価格・料金」の割合(2019〜2025年度)1/3

葬儀サービスの相談件数と「高価格・料金」の割合(2019〜2025年度)

出所:独立行政法人国民生活センター「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」をもとにLIMO編集部作成

独立行政法人国民生活センターが2026年6月3日に公表した「依然として多い葬儀サービスの料金トラブル-『家族葬だから安い』と思っていませんか?-」によると、全国の消費生活センター等に寄せられた葬儀サービスの相談は、2019年度の632件から2025年度は917件に増えました。

このうち、想定より高い、料金に納得できないといった「高価格・料金」に関する相談の割合は、2019年度の33.2%から2025年度には52.6%へ上がっています。相談の半数以上が、料金をめぐるものです。

  • 2019年度:632件(高価格・料金の割合33.2%)
  • 2020年度:686件(同43.1%)
  • 2021年度:800件(同50.0%)
  • 2022年度:951件(同50.9%)
  • 2023年度:886件(同50.3%)
  • 2024年度:978件(同49.4%)
  • 2025年度:917件(同52.6%)

なお、2025年度の件数は2026年3月31日までに登録された分です。前年度の同じ時点の件数は911件で、比べると増えていることになります。

2025年度の主な相談内容(複数回答)は、「高価格・料金」が482件で最も多く、「説明不足」346件、「見積もり(全般)」194件と続きます。

背景には、亡くなる人の多さもあります。厚生労働省が2026年9月30日に公表した「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況」によると、2025年の死亡数は158万9533人でした。前年より1万5845人少なく5年ぶりの減少ですが、160万人近い水準が続いています。

2. 見積もりから「後から増えた」のはどこ?相談事例に出てきた費目

まず、消費者庁の措置命令の内容を確認します。対象となったのは、貸切ホールを使う家族葬のテレビCMです。2025年3〜5月の放送で「家族葬 10.45万円~(税込)」と表示し、最低料金10万4500円で利用できるかのように示していました。

しかし実際には、わずかな場合を除き30万8000円以上の費用がかかっていました。表示の10万4500円と実際の30万8000円では20万3500円の差があり、約2.9倍です。

2.1 相談事例では、何が増えたのか

国民生活センターの公表資料には、広告やチラシの金額と実際の契約額が大きく離れた事例が紹介されています。

  • テレビCM「家族葬 10.45万円~」:実際は30万8000円以上。貸切ホールの家族葬は、わずかな場合を除き30万8000円以上が必要だった
  • 広告「50万円のプラン」:約120万円で契約。打ち合わせで120万円のプランを提案され、やめるなら搬送費用20万円を請求すると言われた
  • チラシ「一日葬は約30万円」:約80万円で契約。マイクの使用料、花や仏具の搬入搬出代、仏衣を着せる費用などが請求に含まれていた
  • ネット表示「家族葬が50万円」:総額200万円超。宗教関係の人向けは140万円のプランと案内され、見積書は「一式」で明細なし。会食などの追加費用も発生

たとえばチラシの事例では、約30万円の表示に対して契約は約80万円となり、約50万円増えています。

2.2 増え方には3つのパターンがある

これらの事例を並べると、費用の増え方は大きく3つに分けられます。

  • 前提の違い:広告の最安プランが、無宗教向けなど自分の希望とは前提の異なるプランだった
  • 細かな項目の別料金:マイク、花や仏具の搬入搬出、仏衣など、含まれていると思っていた項目が別に請求された
  • 人数や内容で動く費目:会食など、参列者の人数や内容によって後から金額が変わるもの

国民生活センターも、「家族葬」「一日葬」といった言葉のイメージにとらわれず、参列者の人数や葬儀の実施日数、料金などを具体的に確認するよう呼びかけています。

熊谷 良子

見積もりの金額は、日程や場所の条件しだいで動くことがあります。私が父を見送ったのは正月明けでした。斎場は確保できたものの、火葬場は標準価格の炉だと10日待ちで、高額の炉であればすぐに空きがあるという状況でした。その間ずっと父を安置しておくのが心苦しく、結局、高いほうの炉を選んでいます。母のときも、民間・公営を問わず火葬場は10日待ちでした。

家族を亡くした直後は、こうした判断を短い時間で迫られます。落ち着いて比べる余裕は、ほとんどないのが実情です。火葬場の空き状況によっては、安置の期間が延びて、その分の費用がかさむこともあります。だからこそ、最初に聞いた金額だけで安心せず、「日程が延びたら何が増えるのか」「グレードを変えるといくらになるのか」を見積もりの段階で尋ねておくことが大切だと感じました。住んでいる地域の火葬場の混み具合も、元気なうちに一度調べておくと安心です。