11月に届く電気・ガスの請求書を見て、「使い方は変えていないのに高くなった」と感じる方もいるかもしれません。国の電気・ガス料金支援は2026年9月使用分で終了し、11月の請求からは電気1kWhあたり3.5円、都市ガス1立方メートルあたり14円の値引きがなくなります。
料金単価が上がったわけではないのに請求額が増えるため、原因がわかりにくい点には注意が必要です。
本記事では、公的統計をもとに世帯人数別の負担増の目安を試算し、請求額が増える理由と家計で確認したいポイントを整理します。
1. そもそも「電気・ガス料金支援」とは?2026年夏は9月使用分で終了
2026年夏の電気・ガス料金支援の値引き単価1/4
出所:経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」をもとにLIMO編集部作成
電気・ガス料金支援は、国が値引きの原資を補助し、電力会社や都市ガス会社が毎月の料金から自動的に差し引く制度です。利用者が申請する必要はありません。
2026年夏の支援は、2026年5月25日の高市内閣総理大臣の記者会見で、中東情勢への対応として打ち出されました。経済産業省は2026年6月12日、「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」を公表しており、規制料金でも値引きが可能になっています。
家庭向け(電気は低圧)の値引き単価は次のとおりです。
- 7月使用分:電気3.5円/kWh、都市ガス14円/立方メートル
- 8月使用分:電気4.5円/kWh、都市ガス18円/立方メートル
- 9月使用分:電気3.5円/kWh、都市ガス14円/立方メートル
- 10月使用分以降:値引きなし
なお、LPガス(プロパンガス)はこの支援の対象外でした。
1.1 なぜ「9月使用分まで」なのに11月の請求から増える?
電気・ガス料金は、使った月の翌月に検針され、翌月分として請求されるのが一般的です。東京電力エナジーパートナーの場合、9月使用分は10月に検針される「10月分」の料金となり、ここに最後の値引きが入りました。
値引きがなくなる10月使用分は11月に検針され、「11月分」として請求されます。多くの家庭では、11月に届く検針票や請求書から値引きが反映されなくなる計算です。
ただし、検針日や契約先によって請求のタイミングは前後します。値引きを独立した行で表示する会社もあれば、東京電力エナジーパートナーのように燃料費調整単価に含めて計算する会社もあるため、手元の明細で「使用期間」と単価の欄をあわせて確認するとよいでしょう。
2. 11月の請求はいくら増える?ひとり暮らし・4人家族の目安
値引きがなくなることで、11月の請求は具体的にいくら増えるのでしょうか。ここでは、2025年6月に環境省が公表した「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(確報値)」をもとに試算します。
同調査による世帯当たりの年間電気消費量は、1人世帯で8.7GJ、2人世帯で14.3GJでした。3人世帯は18.5GJ、4人世帯は20.6GJとなっています。1kWh=3.6MJで換算すると、それぞれ約2417kWh、約3972kWh、約5139kWh、約5722kWhです。
同調査で電気の月別CO2排出構成比をみると、2023年10月は年間の約7%でした。この割合を使用量の比率とみなして10月の使用量を推計し、値引き単価3.5円を掛けると次の目安になります。
- 1人世帯:10月使用量 約169kWh、増加額 約592円
- 2人世帯:10月使用量 約278kWh、増加額 約973円
- 3人世帯:10月使用量 約360kWh、増加額 約1259円
- 4人世帯:10月使用量 約401kWh、増加額 約1402円
都市ガスも同じように考えると、月30立方メートルを使う家庭では、14円×30立方メートルで420円分の値引きがなくなる計算です。たとえば4人世帯で電気と都市ガスを使っている場合、電気の約1402円とガスの420円を合わせた約1822円が、11月の請求で増える目安となります。
いずれも平均的な使用量からの推計であり、住まいの地域や設備、暮らし方によって実際の金額は異なる点にご留意ください。
電気代の請求額が増えると、「また値上げされたのか」と受け止める方もいるでしょう。ただ、今回の11月請求について言えば、増加の中心は料金単価の引き上げではなく、国の値引きがなくなったことにあります。
電気料金は、基本料金と電力量料金に、燃料費調整額や再生可能エネルギー発電促進賦課金を加えて計算されるのが基本です。このうち燃料費調整額は燃料価格に応じて毎月変わるため、支援の有無にかかわらず請求額は月ごとに上下します。
前月との差額をひとまとめに「支援終了のせい」と考えず、使用量の増減、燃料費調整額の変化、値引きの有無という3つに分けて見ることが大切です。この見方を身につけておけば、料金改定や新たな支援策が加わったときにも、何がどれだけ家計に影響したのかを落ち着いて判断できるのではないでしょうか。
3. 11月の請求で見落としやすい3つの注意点
11月の請求額を読み解くうえで、見落としやすい点が3つあります。支援終了の影響とそれ以外の要因を分けて、順に確認していきましょう。
3.1 注意点1:値上がりの理由は「支援終了」だけではない
東京電力エナジーパートナーが2026年8月28日に公表した「2026年10月分電気料金の燃料費調整等について」によると、平均モデル(従量電灯B・30A、月260kWh)の10月分料金は値引き反映後で8275円でした。同社の11月分の燃料費調整単価と託送料金見直しの影響額をもとに、見直し後の料金を1カ月分すべてに当てはめて計算すると、11月分は9561円となり、前月より1286円増えます。
このうち値引き終了による増加は910円(260kWh×3.5円)です。燃料費調整単価は1kWhあたりマイナス9.30円からマイナス5.33円へ3.97円上がっており、値引き終了分を除いた0.47円分、約122円は燃料価格の変動によるものでした。
残る254円は、11月1日から実施される託送料金の見直しを電気料金に反映した分です。ただし、見直しは11月1日以降の使用分から適用され、11月分の請求では新旧の料金が日割りで計算されます。検針日によって異なるものの、254円が1カ月分まるごと上乗せされるのは12月分の請求以降が目安です。
増加額1286円のうち、約3割は支援終了とは別の要因が占めています。
- 10月分(9月使用分、値引き反映後):8275円
- 11月分(10月使用分、託送料金見直し後の料金を1カ月分適用したモデル額):9561円
- 内訳:支援終了910円(約71%)/託送料金見直しの反映254円(約20%)/燃料費調整の変動 約122円(約9%)
3.2 注意点2:託送料金の見直しは地域によって扱いが異なる
託送料金は、電力会社が送配電網を使う際に一般送配電事業者へ支払う利用料で、電気料金の一部を占めるものです。2026年11月1日からは、北海道・東北・東京・中部・関西・四国・九州・沖縄の一般送配電事業者8社が、物価や金利の上昇などを踏まえて託送料金を見直します。
中国電力ネットワークも、電力需要の下振れを理由に、同日から託送料金を引き上げる届出を行いました。一方、北陸エリアについて、東京電力エナジーパートナーは今回の料金見直しを実施しない方針です。
新電力の中にも、託送料金の見直しを11月1日から料金に反映すると案内している会社があります。契約先から届いている料金改定のお知らせには、一度目を通しておきましょう。
3.3 注意点3:LPガスやオール電化の家庭は影響の出方が違う
LPガスは国の支援の対象外だったため、LPガスを使う家庭で11月に値引きがなくなるのは電気代だけです。
反対に、給湯や調理も電気でまかなうオール電化住宅は使用量が多く、値引き終了の影響を受けやすくなります。たとえば月500kWhを使う家庭では、3.5円の値引きがなくなるだけで1750円の増加です。
また、マンションで建物全体が一括して電気を受電している場合などは、値引きの反映方法が一般的な家庭向けの契約と異なることがあります。気になる場合は、管理会社や契約先に確認すると安心でしょう。
4. 冬の電気代はどうなる?昨冬の支援水準と今冬の見通し
昨冬の値引き単価と、支援がない場合の1月の影響額4/4
出所:資源エネルギー庁「暖房費のかさむこの冬も、電気・ガス料金の支援を実施。よくいただく質問に資源エネルギー庁がお答えします!」・環境省「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」をもとにLIMO編集部作成
秋の負担増に続いて気になるのが、暖房で電気やガスの使用量が増える冬の光熱費です。
昨冬は、2025年11月21日に閣議決定された総合経済対策にもとづき、2026年1月から3月使用分を対象に支援が実施されました。資源エネルギー庁の「暖房費のかさむこの冬も、電気・ガス料金の支援を実施。よくいただく質問に資源エネルギー庁がお答えします!」によると、予算総額は5296億円です。
当時の値引き単価は次のとおりでした。
- 2026年1月・2月使用分:電気4.5円/kWh、都市ガス18円/立方メートル
- 2026年3月使用分:電気1.5円/kWh、都市ガス6円/立方メートル
一方、2026年10月14日時点で、今冬(2027年1月使用分以降)の支援について政府からの正式な発表は確認できていません。
仮に昨冬と同じ4.5円の値引きがない場合の影響を、環境省の同調査をもとに試算してみます。同調査では、2024年1月の電気のCO2排出構成比は年間の約11%です。この割合で推計すると、1月使用分では1人世帯で約1196円、4人世帯で約2832円分の値引きがない計算になります。
総務省統計局が2026年2月6日に公表した「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の光熱・水道費は月2万3540円でした。2人世帯の11月の増加額の目安(約973円)は、この約4%にあたります。
別々の調査を組み合わせた目安ではあるものの、年金収入が中心の世帯にとっては、毎月の固定費として小さくない額でしょう。
5. まとめにかえて|11月の検針票で確認したい3つのステップ
国の電気・ガス料金支援は9月使用分で終わり、11月の請求から値引きがなくなります。冬を前に、次の3つのステップで家計への影響を確かめておきましょう。
- 11月分の検針票や明細で、使用期間・使用量と値引きの有無を確認する
- 電気の使用量に3.5円、都市ガスの使用量に14円を掛けて、値引き終了による増加額を計算してみる
- 経済産業省や資源エネルギー庁の発表で、今冬の支援の有無を確認する
使用量を記録しておけば、新たな支援策や料金改定が発表されたときにも、自分の家計への影響をすぐに試算できます。
支援の終了と冬の訪れが重なり、光熱費の先行きに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。ただ、11月の明細は、値引きのない状態の光熱費がわかる貴重な資料でもあるのです。
この1カ月分の使用量と金額を手帳や家計簿アプリに残しておくと、冬の支援策が発表されたときに「わが家ならいくら下がるか」を自分で計算できます。料金プランの見直しを考える際も、実際の使用量がわかっていれば、各社の料金シミュレーションをより正確に比べられるでしょう。
とはいえ、光熱費を気にするあまり暖房を我慢して体調を崩しては本末転倒です。数字を把握したうえで暖房を上手に使い、冷え込む季節も安心して過ごしていただければと思います。
参考資料
- 経済産業省「2026年7月、8月及び9月使用分の電気・ガス料金支援の実施に伴い、電気・都市ガス料金の値引きを行うことができる特例認可・承認を行いました」(2026年6月12日)
- 経済産業省 資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援」
- 資源エネルギー庁「暖房費のかさむこの冬も、電気・ガス料金の支援を実施。よくいただく質問に資源エネルギー庁がお答えします!」
- 東京電力エナジーパートナー「2026年10月分電気料金の燃料費調整等について」(2026年8月28日)
- 東京電力エナジーパートナー「燃料費調整のお知らせ(2026年11月分)」
- 東京電力エナジーパートナー「燃料費調整単価等一覧」
- 東京電力エナジーパートナー「低圧の料金メニューの見直しについて」(2026年9月29日)
- 東京電力パワーグリッド「託送供給等約款の変更届出について」(2026年9月11日)
- 環境省「家庭部門のCO2排出実態統計調査(家庭CO2統計)」
- 環境省「令和5年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査 資料編(確報値)」
- 総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」(2026年2月6日)
池上 翠
